2012 Fiscal Year Annual Research Report
光励起高スピンπラジカルのダイナミックスを利用したスピントロニクスへの展開
Project/Area Number |
24350076
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
手木 芳男 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00180068)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣津 昌和 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (30312903)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 励起高スピン状態 / πラジカル / スピン整列 / スピントロニクス / ペンタセン / スピンダイナミックス / 時間分解ESR / LIESST |
Research Abstract |
本研究課題の目標は、我々が世界に先駆けて見出した光励起高スピン状態をとる有機πラジカル(以下「励起高スピンπラジカル」と呼ぶ)の比類まれな特性(スピン整列の堅牢性、系の拡張性)を最大限利用し、光により励起した状態の動的性質を利用した複合機能発現とその制御を達成し、光励起高スピンπラジカルを基盤とする励起状態スピントロニクスへと新展開を図る事である。この目的を達成すべく、初年度は、申請書に記載した計画に沿って殆ど計画通り以下の研究を遂行した。 (A)πラジカルの光励起量子混合状態からの電子移動やエネルギー移動による分極移動の解明 初年度は、πラジカルの光励起量子混合状態を研究するモデル系として、励起三重項部位とラジカル間の交換相互作用が弱いと予測される励起三重項-ラジカル連結系(ナフチリイミド-ラジカル系)を合成した。 (B)電子物性を改良した励起高スピンπラジカルのCT錯体の光物性、光伝導、スピン整列の解明 励起高スピンπラジカル系をスピントロニクスへと展開させる目的で、πラジカルに電子ドナー性を付与する目的で、アントラセン部分をより拡張したπ共役系であるペンタセンに変更した系を合成した。THF溶液及びジクロロメタン溶液中、酸素飽和条件下での光化学的安定性を調べたところ、ラジカルを付加する事により、安定性が著しく向上する興味深い現象が見出された。次年度は、この現象のメカニズムについて詳細に研究する予定である。 (C)πラジカルの増強系間交差による金属錯体の光磁性制御 励起高スピンπラジカルを配位子として用いたFe錯体による、芳香族部位の光励起によるLIESST現象をコントロール化合物と共に詳細に研究し、その成果を論文にまとめた(Dalton Trans., 2012)。また、次年度に向けてビピリジン部位をカテコール等に変えたπラジカル配位子の合成を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
πラシカルに電子ドナー性を付与する目的で、アントラセン部分をより拡張したπ共役系であるペンタセンに変更した系を合成したところ、ラジカルを付加する事により、安定性が著しく向上する非常に興味深い現象が見出された。この点では、当初予想しない現象が見出され、計画以上に研究が進展したと言える。一方、光励起量子混合状態を研究するモデル系の方は計画より少し遅れ気味であるが、電子物性を改良した励起高スピンπラジカルの研究の方は、それを差し引いても余りある進展をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の変更は無く、予想外の結果も得られているので、当面はこのまま推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「直接経費次年度使用額」が僅か45,473円出たが、これは春季年会への学会発表のための出張が、日帰りできる距離であったので宿泊せずに旅費を節約したためである。翌年度の研究費と合わせた使用計画については、当初と殆ど変更は無い。
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