2013 Fiscal Year Annual Research Report
海水中における水銀の有機化(メチル化)反応に及ぼす環境要因の影響に関する研究
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24350080
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Research Institution | National Institute for Minamata Disease |
Principal Investigator |
松山 明人 国立水俣病総合研究センター, その他部局等, 室長 (00393463)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永野 匡昭 国立水俣病総合研究センター, その他部局等, 主任研究員 (10393464)
矢野 真一郎 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80274489)
田井 明 九州大学, 学内共同利用施設等, 助教 (20585921)
多田 彰秀 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90144328)
稲葉 一穂 独立行政法人国立環境研究所, その他部局等, 研究員 (60176401)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | メチレーション / 水俣湾 / 水槽モデル実験 / メチル水銀 / 環境要因 / 栄養塩 / 組み合わせ実験 |
Research Abstract |
2006年から2010年までの水俣湾海水・各種分析データをSPSSを用いて、重回帰、単回帰分析を行い、海水中における水銀のメチレーションに関する検討を実施した。回帰分析に供した分析項目は以下の12種類、溶存態メチル水銀、海水温、塩分濃度、DO、pH、クロロフィルa、濁度、σt、 NO3+NO2、NO 2、 NH4、PO4、 溶存態炭素とした。重回帰分析は、最初にステップワイズ法による検討を行い、この結果に化学的な根拠をふまえ強制投入法で解析を行った。ステップワイズ法では、塩分濃度およびNPOCの組み合わせでR= 0.623、R2= 0.388を得た。しかし単回帰分析の結果、海水温と溶存態メチル水銀濃度との相関が最も高く、また一般に温度が高くなれば各種反応が促進されることが期待できることから、上記の組み合わせに海水温を独立変数として組込むべきと考え、強制投入法で検討した。その結果、R= 0.580、R2= 0.329が得られた。他方、一般に海水温と良好な負の相関関係を持つDO(r= -0.623、n= 603)を、海水温に代えて独立変数として加えた場合、R= 0.702、R2= 0.484を得た。この結果をふまえ実際の九州大学での室内モデル水槽実験では、DOの経時変化を確認することを前提に、海水温を実験要因として採用し、塩分濃度、海水温、NPOCの3要因で実験を開始した。実験用海水は水俣湾より採取した。採取・運搬後200L容ガラス製水槽に海水を入れ、この中に塩化第二水銀溶液を加え、水銀として100 ng/Lになるよう調製した。実験結果の一例を示す。塩分濃度1.5 %、海水温15℃、30℃の2段階でNPOCは添加していない条件で1週間培養し、溶存態メチル水銀濃度の経時変化を測定した。海水温を高くした系では、徐々にDO濃度も低下し、培養初期の段階(培養3日目)において急激な溶存態メチル水銀濃度の上昇を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一昨年より不調をきたしていたECD-GCも完全復調し、現在、高感度なメチル水銀測定を可能な状態を維持できていること。またこれまで時間を要していた海水中の栄養塩分析、溶存対炭素分析もすべて終了し、2006年から2010年まで5年間分のすべての測定データを用いた重回帰分析を実施することができた。結果として、海水中のメチレーションについて影響を及ぼしていると予想される環境要因の組み合わせ抽出でき、昨年末より具体的なモデル水槽実験にも着手することができた。このことは、今後の室内モデル実験に対する目途を付けることができたことを意味している。ただ水俣湾の水質観測はこれまでと同様に継続しているが、本研究を開始して以来いまだに水俣湾・海水中のメチル水銀濃度が上昇してきていないことが気がかりとなっている。さらに、本研究課題の中でこれまで微生物研究に携わってくれていた国環研の稲葉先生からの、ご自身の職場移動による研究担当離脱の申し入れが今年3月にあったこともあり、研究の推進に関する問題が顕在化している。これまでは多少も遅れもあったが概ね順調と判断できたが、微生物研究に関しては方向性を変更せざるを得ない状況になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
九州大に設置にしている室内モデル水槽実験系を駆使した環境要因組み合わせ実験を、継続実施し基礎データの蓄積に努める。水俣湾の水質モニタリングもこれまでと同様に継続するが、これまでとは少し採水頻度を変更し、これまでの実績より夏季もっとも溶存態メチル水銀濃度が上昇した7月に的をしぼり、毎週採水を行い本当にメチル水銀濃度が夏季上昇していないのかどうかを確認する。微生物研究に関しては、上記理由の中で述べた内容から、当面、微生物のDNA解析等ができなくなることから、急遽代わりの担当者を探すことを試みる。しかし、すでに本課題が4月より最終年度となることから、新規の担当者を見つけることが難しいことも容易に予想される。この場合は、微生物検討分野で主な費用が発生する水俣湾および水槽モデル中の微生物の集菌およびDNA抽出のみを継続することとし、できるだけ早い時期に抽出物の解析を大学等研究機関へ依頼できるように試みる。他方、来年の最終報告にまで全体の微生物検討が間に合わなかった場合には、これまでの2年間で得られた微生物に関する研究成果をベースとしてまとめることとしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度も過去2年間と同様に各担当の先生方に、計画的にこれまで別途蓄えてきた予算を分配し研究の効率化を図るため。 今年度も昨年度と同様に、各先生方に対し総額で400万を分配する予定としている。内訳は、矢野、田井200万、多田50万、永野50万、松山100万。平成26年度配布金額についてはガラス器具等の消耗品や夏季水俣湾集中観測の傭船費等に使用する予定としている。
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Research Products
(4 results)