2013 Fiscal Year Annual Research Report
生体らせん高分子を用いた交流駆動型電気化学円偏光発光デバイスの開発
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24350090
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小林 範久 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 教授 (50195799)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 一希 千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 助教 (00554320)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 有機電子材料 / 生体高分子 / 電気化学発光 / 円偏光発光 |
Research Abstract |
本研究では円偏光発光を可能とするDNAやポリペプチドなど生体らせん高分子/発光材料複合体の光電特性・素子応用に関する知見と,高速応答・高輝度な交流駆動電気化学発光素子の知見を組合せ,安価簡便に作成でき,円偏光発光可能な交流電気化学発光素子の実現を目的とした。本年度は特に興味深い発光特性を示すDNAを用いた電気化学発光(ECL)素子の発光機構の解明を中心に円偏光発光測定系の改良を行った。 1.DNA修飾電極系で交流駆動ECL素子を作成するため,これまでの知見から透明電極上に薄膜形成したDNAに,電気化学活性と発光特性を有するルテニウム(Ru)等遷移金属錯体を電気泳動法を用いた導入した。得られたDNA複合膜はECL溶液である炭酸プロピレン(PC)溶液に浸しても溶解することなく,またRu錯体の溶出も認められなかった。二枚のDNA複合体膜修飾電極でPC電解質溶液を挟んだセルに±4 Vの矩形波電圧を印加したところ,DNAを用いない系ではあり得ない10000Hzから発光が認められた。この応答時間は50μsecであり,DNAがない場合(約1msec)に比べ20倍高速なECL特性をDNA複合系が示すことが明らかとなった。この詳細は現在解析中だが,DNA複合体を被覆した電極系では電気二重層の充電が10μsecと非常に高速で行われることに起因することが考えられる。 2.CPL測定装置を立上げ,精度高い測定を定量的に行うため,CPL発光が既知のキラルなEu錯体において測定を行った。Euイオンの発光帯において明確な円偏光異方性因子(gCPL)が得られた。特にEuイオンの磁気双極子(594nm)遷移からのシグナルは電気双極子(615nm)遷移よりも強いことが確認できており,gCPLを定量的に測定できていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNA複合体修飾電極を用いた交流駆動型ECL素子が10000Hz,すなわち50μsecで駆動したことは,通常の電気化学系では考えにくい新奇な現象であり,これまでの電気化学系での常識を覆す挙動といっても過言ではない。電気化学反応を起こすには電極表面での電気二重層の充電が必須であり,その充電時間は一般的には数m~数十msecを要する。DNA修飾膜の電気二重層充電が約10μsecで完了することを見出したことは非常に興味深く,新たな概念の提案ならびに動画対応も可能なDisplay応用にもつながる。この意味では非常に進展したといえる。しかしながら,最終的な目的が円偏光発光素子の開発であることを考慮すると,まだすべての物質群で再現性ある円偏光特性の定量的評価に至ってはおらず,早急に再現性高いCPLが得られる条件を確立すべく努力している。
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Strategy for Future Research Activity |
DNA複合体修飾電極を用いた交流駆動型ECL素子が前例のない特徴ある発光特性を示している。まだ輝度は低いものの数時間の寿命は得られるため,素子設計の観点からは導入Ru錯体量を増やす,および膜厚の最適化等を検討し,輝度の向上に努める。また,従来の電気化学系にはない高速応答が可能な明確な理由が明らかになっていないため,DNA複合体の構造と光励起発光特性さらには交流電解印加時の電流応答や発光応答を解析,他の類似マトリクス系との比較検討結果から,何がこの高速応答の要因であるかを明らかにする。 一方,DNAを含む物質群で再現性の高い円偏光発光測定系のを確立するため,円偏光発光を発現する既知物質を用いて確度の高い測定が再現できる条件出しを行う。さらにはそれらをDNAに導入した場合の変化を定量的に評価する。まずは,光励起系で再現性のある結果を得たのち,前述の交流駆動ECL素子の円偏光発光特性評価を行う。DNA複合体修飾電極を用いた交流駆動ECL素子からCPLの発現を見出すことを本最終年度のもっとも大きな目的とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
確度の高い円偏光発光解析装置を構築し,定量的な再現性を得るための方法論に時間を取ったため,標準資料の購入や装置立上げる上での機器に適切な予算配分ができなかったたことに起因する。次年度使用金額が生じた理由の多くは,研究概要や本年度の達成項目にも示したように,円偏光発光において目的とする再現性ならびに普遍性が得られていないことに由来する。さらにはその遅れに由来する国内外での発表における旅費が次年度繰越となった。 基本的には前年度達成できなかった円偏光発光測定の再現性確保ならびに普遍的な結果を得るための装置設計に使用する。データ取得に関する多少の遅れはあるものの,全体的な計画の遂行には問題なく,本来ならば今年度円偏光発光測定で使用すべきであった資金を来年度使用する目的である。
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Research Products
(8 results)