2013 Fiscal Year Annual Research Report
担体界面制御による高活性燃料電池用先進的電極触媒の開発
Project/Area Number |
24350093
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
柿沼 克良 山梨大学, 燃料電池ナノ材料研究センター, 教授 (60312089)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 誠 山梨大学, 燃料電池ナノ材料研究センター, 教授 (10526734)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノ材料合成 / 電極触媒 / 燃料電池 / 固固界面 / 固気界面 |
Research Abstract |
固体高分子形燃料電池(PEFC)の電極触媒にはPtナノ粒子担持カーボン触媒が用いられている。カーボン担体は高比表面積、電子伝導パス、ガス拡散パスを兼ね備え、過電圧の軽減に重要な役目を果たすものの、耐久性に課題がある。近年、カーボンと同様な高比表面積、電子伝導パス、ガス拡散パスもつ高耐久性担体が求められており、本研究では互いに結着させた連珠構造を有する担体候補材料のナノ粒子の作製及び高活性なPt担持触媒の探索を行っている。昨年までに、酸化スズ系、窒化チタン系において、その連珠構造体の合成に成功し、比表面積を増加させつつも、高電子伝導性を保持していることを確認した。また、そのPt担持触媒を合成して酸素還元活性を示すことや、高電位で耐久性があることも明らかにした。本年度は担体の微細構造を最適化し、その触媒活性をPt担持カーボン触媒と同レベルまで到達させることに成功した。 担体の合成には火炎法を用い、そのガス供給量、原料供給量、火炎温度等を制御することで、担体の連珠構造を密充填型から分岐鎖型へと任意に制御することに成功した。その微細構造制御により担体の電気伝導度は10-3S/cmまで向上し、Ptの担持によって10-2S/cmまで飛躍的に高くなることを新たに見出した。一方、熱処理温度・雰囲気に対するPtの担持状態を制御することで、担体-Ptの正接合に成功し、担体-触媒相互作用を制御できるようになった。正接合させたPtの触媒活性は、Ptの担持量の増加と共に飛躍的に向上し、Pt担持量が15wt%以上にて既存触媒より高い触媒活性を示すことを明らかにした。この担持量は市販触媒の1/3以下であり、Pt-担体界面制御により担体-触媒相互作用を積極的に利用していることを意味している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではPtナノ粒子の高活性結晶面を積極的に利用して電極触媒活性の飛躍的な向上を図るため、結晶性の高い無機ナノ粉体を合成するビルドアッププロセス、それらにPtナノ粒子を担持させるプロセス及び担体上のPtナノ粒子の結晶面を選択配向させるプロセスを確立させること、触媒の界面構造、Ptや無機ナノ粉体の電子状態を調べ、触媒活性向上のメカニズムを解明すること、そして、化学的に安定な無機ナノ粉体を担体に選択することにより、高活性と高耐久性を備えた先進的新規固体高分子形燃料電池用電極触媒を提案することである。 H25年度までに、結晶性の高い無機ナノ粉体の合成及びその微細構造制御には、原料供給速度、ガス導入量が重要であることを確認した。そして、TEMにて各ナノ粒子が一つの結晶子になっていることを明らかにし、密充填型から分枝鎖型に微細構造を制御することでその電気伝導度が飛躍的に向上することを見出した。また、その担体へのPt担持及びPt-担体界面制御、Ptの高活性結晶面生成方法を確立し、そのPt担持触媒の電気伝導度を測定したところ、担体に比べ電気伝導度が向上し、触媒活性も市販Pt担持カーボン触媒を越えることを明らかにした。これは、Pt-担体界面制御により担体-触媒相互作用を積極的に利用していることを意味しており、本研究の目的のひとつを達成し、高活性と高耐久性を備えた先進的新規固体高分子形燃料電池用電極触媒の設計指針の大枠を明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究は結晶性の高い無機ナノ粉体とPt界面及びPtの活性面制御に注目して、触媒活性の高性能化を図っていた。これは、固固界面における電荷移動過程、各Pt結晶面での素反応が触媒活性に大きく影響する観点に立脚したものである。H25年までにその界面、結晶面の制御手法を確立し、電子輸送物性を解明してきた。 しかし、触媒活性はPt系触媒の組成(合金組成)、被覆する有機バインダーからのプロトン輸送量、ガス拡散パスを介した酸素輸送量の影響を大きく受ける。そこで、これまで触媒としてはPtのみとしてきたが、今後はPt合金触媒へとシフトさせ、その触媒活性をこれまでの界面制御、活性面制御手法に基づいて評価する。特にPtRu,PtSn系においてPtより活性の向上が見込めることから、候補触媒とする。 更に、実触媒ではそれら触媒に有機バインダーからのプロトン輸送が重要となる。有機バインダーはナノメートルレベルの厚さで触媒を被覆し、Ptナノ粒子との相互作用によって、その被覆状態やプロトン輸送が大きく影響すると考えられる。また、ガス拡散経路により供給される酸素量によっても、触媒活性が大きく影響する。H.25年度までに確立した担体微細構造制御・高結晶面作製手法を利用してガス拡散経路を制御し、本センターで活用している電子顕微鏡、SAXS等を用いて有機バインダー-触媒界面の観察及び制御を行う。そして、これまでの水溶液系における触媒評価を実セル環境下での触媒評価(単セル利用)を行い、高活性と高耐久性を備えた先進的新規固体高分子形燃料電池用電極触媒の提案を図る。
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Research Products
(27 results)