2013 Fiscal Year Annual Research Report
ケイ素とガスデポジション法を用いた次世代リチウム二次電池用負極の創製
Project/Area Number |
24350094
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
坂口 裕樹 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00202086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
薄井 洋行 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60423240)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 二次電池 / リチウムイオン電池 / 負極材料 / ケイ素 / ガスデポジション |
Research Abstract |
リチウム二次電池にはさらなる高エネルギー密度化が求められているが,新規な負極用活物質としてSiは現行の黒鉛に比べ10倍もの高い理論容量を持つことからその活用が切望されている.しかしながら,Siは充放電時の体積変化が大きいためサイクル寿命が短いという問題を抱えている.これに対しわれわれは,無電解析出法を用いてSi粒子上にNi-Pを被覆し,これを原料としてガスデポジション法により作製した電極が優れた性能を示すことを報告してきた.ただし,この電極においても依然として100サイクルまでに容量の落ち込みがみられる.この原因の一つにSi粒子表面からNi-P被覆層が脱離してしまうことが考えられる.そこで本研究ではSi粒子と被覆層との密着性を高めるためにコンポジット粉末への熱処理を行った.Ni-P/Si 粉末のSEM観察とEDXによる粒子表面の元素分析を行った結果,Ni-P(NiとNi3Pとの混合相)はSi粒子上の広い範囲に斑点状に析出していることが確認された.またX線回折の結果より,被覆層中のNiがSi内へ熱拡散したことがわかった.LiTFSA/PC電解液中における未処理および熱処理を施したNi-P/Siからなる電極の放電(Li脱離)容量の充放電サイクル依存性より,未処理のNi-P/Si電極と比較して熱処理Ni-P/Si電極ではサイクル初期の容量の落ち込みが顕著に抑制され,100サイクル後においても1750 mA h g-1の放電容量を維持した.これは,熱処理によりNiがSi内へ拡散したことでNi-PとSi粒子との密着性が向上し,Ni-Pが長期サイクルにわたり被覆層として存在できたことが要因と推察される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
われわれは3種類の概念に基づいてSiの欠点を補うような物質を用いたSiコンポジット電極の開発に取り組んでいるが,そのひとつがSi粒子上に無電解析出法によりNi-P層を部分的に析出させた試料粉体を原料としてGD法により厚膜電極化するものである.このコンポジット電極は提案する3種類のコンポジット電極のなかで最もSiの占める割合が高く,電極容量の観点からは非常に有利なものとなる.これまでの研究により,Si粒子上にNi-P層を斑点状に析出させた試料において1000サイクル後でも750 mA h g-1を超える優れたサイクル特性を示す電極を得ているが,本研究ではさらなる性能向上を目指して被覆形状・形態の最適化を行う方針を掲げている.これについて,めっき浴の組成やpHの調整により斑点の密度や大きさを変化させたり,被覆層中のNi3P相とNi相の存在比を変えたり,Si粒子上のNi-P層の被覆形態・形状を変化させるなどの試みを行ってきたが,その過程で試料に熱処理を施すことで電極性能が著しく向上することを見出すことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
(i)Siとサイクル安定性に優れた合金粉末との混合物を原料としたGD厚膜電極化・・・ケイ素の高容量を活かしつつ微粉化の欠点を克服するには,マトリックスとなる物質の性質に微調整が必要になるものと推測される.そのために,性質の異なる2種類の物質を用いたり,3元系以上に多元化させたりすることも検討する. (ii)Siとサイクル安定性に優れたシリサイドとの共晶組成物質を合成し,これを原料としたGD厚膜電極化・・・前年度までに主として第4周期の遷移金属シリサイドを調べてきたが,用いるシリサイドの性質によってコンポジット電極の性能が大きく変化することが示された.この理由については,各々のシリサイドの熱力学的安定性やリチウム挿入時のリチウムと遷移金属との親和性を明らかにすることで解明するよう努めてきたが,本年度もこれを一層推進する.シリサイドとして希土類金属についても検討し,ガドリニウムシリサイドが特異的に優れた性能を示すことを見出したので,その理由を解明する.さらに,マトリックスとなるシリサイドの性質を多様化させるために,2種類のシリサイドの混合や3元系以上へ多元化させたりすることも検討する. (iii)Si粒子上にELD法により金属・合金を被覆した試料粉末を原料としたGD厚膜電極化・・・前年度までの研究により,Si粒子上にNi-Pをめっきした試料にさらに熱処理を施すことでこれまで以上に優れたサイクル特性を示す電極が得られた.本年度は熱処理の最適化やNi-P被覆の前処理を行いさらなる改善を図る. (iv)全体に共通した研究実施計画・・・前年度までの研究で,上述の(i)~(iii)の電極の性能が通常の有機電解液への添加剤の添加やイオン液体電解液の適用によって大きく向上することが見出された.そこで、今年度はSiコンポジット電極の潜在能力を一層引き出すための電極/電解質界面の最適化に傾注する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していた出張が取りやめになり旅費の支出が減った. 物品費として使用する.
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Research Products
(25 results)