Research Abstract |
本研究では,分子内に2つのイオン安定サイトを有したリング型ポリオキソメタレート分子を用い,分子内のサイト間イオン移動(および分子間のイオン移動)を利用した新規物性の創出を目指す.我々は結晶内の移動・伝導に寄与するイオンとして多価・磁性イオンなどの重元素を選択し,磁場や電場を用いたイオン移動制御とそれに伴う特異な磁気的,電気的物性評価を行う. 本年度は,まず,中心サイトにランタノイドイオンを含むリング型ポリオキソメタレートの合成を行った.その結果,種々のランタノイドイオン(Gd(III)(S=7/2),Tb(III)(S=3),Nd(III)(S=3/2),Sm(III)(S=5/2)を包接したPreyssler型ポリオキソメタレートの効率的な合成法を発見し,大量の目的化合物を得た.次いで,これらの物質を用いたX線構造解析を行い,ポリオキソメタレート内を揺らぐイオン移動を構造学的に解析した.得られた結果から,およそ200K以上で中心イオンの移動を確認し,IRの結果からもこれが裏付けられた.そこで,本系を用いて低温での誘電率測定を行い,イオン揺らぎに起因した新規機能発現の調査を行った,しかし,本系は真空下において結晶水の脱離による結晶格子の崩壊が観測された.我々はこの問題を解決するために,ポリオキソメタレートのカウンタカチオンを様々な物質に置換した.最終的に,カウンタカチオンとしてランタノイドイオンを用いることで,真空状態においても脱水しない結晶の作製に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は材料合成を中心に行う予定であったが,効率的な合成方法を発見した為に大量の材料獲得に成功した.また,物性評価を行う上で大きな障害となる問題を既に解決できたことから,研究達成度は当初の計画を上回るものと考えられる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の予算は主に,消耗品費(薬品,ガラス器具,寒剤費)および旅費(研究成果報告,情報収集,研究打ち合わせ)として使用する予定である.
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