2012 Fiscal Year Annual Research Report
薬物送達システムに資する無機中空蛍光体の蛍光特性に関する基礎的研究
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24350098
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
神 哲郎 独立行政法人産業技術総合研究所, ユビキタスエネルギー研究部門, 主任研究員 (30357248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
落石 知世 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (30356729)
矢澤 哲夫 兵庫県立大学, 大学院・工学研究科, 教授 (50347522)
大幸 裕介 兵庫県立大学, 大学院・工学研究科, 助教 (70514404)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 希土類蛍光体 / ドラッグデリバリーシステム / ナノ材料 / 分相ガラス / 蛍光特性 |
Research Abstract |
本研究では、中空構造および多機能を有する高輝度希土類系蛍光体のドラッグデリバリーシステム(DDS)の創成について検討する。平成24年度は、以下の材料創成および機能発現を目標とした。すなわち、 1.ガドリニウムを含有する蛍光体について酸化物系ならびにガラス系で創成する。 2.末端に抗体を有する有機化合物で改質してガン細胞や組織上へ化学的に結合できるようにした希土類蛍光体微粒子を励起光照射による強い蛍光でガン組織の直接目視を可能にする機能を付加する。 結果として得られた成果は以下の通りである。 粒径100~500nmを有するポリマー微粒子をテンプレートとして、希士類(Y,Gd,Eu)硝酸塩アルコール溶液をコーティングして水熱処理し、空気中で加熱してテンプレート剤を燃焼除去し中空粒子を得ることができた。X線回折からGd_2O_3:Eu^<3+>に帰属され、組成分析から(Y,Gd)_2O_3:Eu^<3+>であることがわかった。さらにSEM像から粒径がいずれも500nm以下であり、完全な閉殻構造であることが明らかとなった。 ヒト由来乳ガン細胞を培養して、これに葉酸誘導体で表面改質した上記希土類蛍光体を蒔いて付着させ、その表面の蛍光について検討した。結果として、ガン細胞膜表面に当該蛍光体を固定化させ、表面を赤色発光させることに成功した。 一方、現在、ガンの治療法として、非常に注目を集めているホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に着目し、ホウケイ酸ガラスを母体ガラスとし、当該ガラス中にGdBO_3:Eu^<3+>の蛍光結晶が析出する条件を検討した。当該結晶は、共沈法やゾルゲル法等の溶液法によって得るのは非常に困難であるが、Na_2O-B_2O_3-SiO_2系ボロシリケートガラスにY_2O_3とGd_2O_3を添加し、1600℃程度で溶融、ガラス化し、その後結晶化する手法によって、単相の状態で当該結晶が得られることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下に示す達成すべき項目、すなわち1)200nm以下の粒径の中空粒子としての希土類蛍光体の創成、2)金ナノ粒子を介した疑似抗体化合物による当該蛍光体の表面改質、3)ヒト由来がん細胞のイメージング、4)疑似薬の徐放効果、5)中性子線照射に伴うガンマ線の放出とがん細胞死滅効果、6)発熱効果、以上を検討課題とし、本年度は達成することが困難と考えてきた1~3までの目標を達成することができたので、研究は順調に推移していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度以降は、DDSとしての基本的特性である、薬剤徐放特性、放射線特性および発熱特性について検討する。特に本年度は京都大学原子炉実験所の共同利用制度により熱(外)中性子の照射実験をヒト由来ガン細胞に当該DDSを蒔いて効果を確認する。材料自体の微粒子化の検討も同時に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ゾルザル法を経ない溶融ガラスの微粒子化の検討に急冷や粉砕等の手法を検討するため、前年度繰り越した基金を充てる。加えて加熱処理を伴わない希土類蛍光体中空粒子の創成の検討と光学的測定系の充実のためにその資金を充てる。
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