2013 Fiscal Year Annual Research Report
革新的プリンタブルOLEDを指向した有機金属系ハイブリッドりん光材料の創製
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24350101
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
八木 繁幸 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40275277)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 有機電子デバイス / OLED / 溶液塗布法 / 有機金属錯体 / りん光材料 |
Research Abstract |
本研究では、革新的な有機電界発光素子(OLED)として単一有機発光層からなる新規素子構造を提案し、その高効率化に向けた材料開発を行っている。平成24年度の進捗を受け、平成25年度は有機金属系ハイブリッドりん光材料の発光機能の最適化を目指し、分子設計と合成戦略について検討した。また、白色発光OLEDの作製に必要な赤色系りん光材料の開発も検討した。以下に研究実績の概要を示す。 1.有機金属系ハイブリッドりん光性りん光材料の創製 カルバゾール含有デンドロンを青色りん光性ビスシクロメタル化イリジウム(III)錯体に付与することで、ホール輸送性ハイブリッド青色りん光材料の創出に成功した。当該材料を単一有機発光層とするOLEDを作製したところ、効率的な青色電界発光が得られた。電子輸送材料をドープするとさらに発光効率が向上したことから、電子輸送性ユニットの導入による発光機能改善の可能性が示唆された。 また、平成24年度に開発したホール輸送性デンドロンを有する緑色りん光性ビスシクロメタル化イリジウム(III)錯体に電子輸送性ユニットを導入するために、オキサジアゾール骨格を有するβ-ジケトナート補助配位子を新規合成した。当該補助配位子を用いてモデル錯体を合成したところ、極めて弱い近赤外発光しか得られず、電子輸送性ユニットの導入について再検討する必要があることがわかった。 2.白色発光OLED創出のための赤色系りん光材料の創製 開発したハイブリッド青色りん光材料を用いて白色発光OLEDを作製するには、赤橙~深赤色(赤色系)の発光を示すりん光材料をドープする必要がある。そこで、ビスおよびトリスシクロメタル化イリジウム(III)錯体を基盤として、高効率赤色系りん光材料を開発した。当該材料は高分子薄膜中で比較的高い発光量子収率を示し、OLED用発光材料としての有用性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、ビスおよびトリスシクロメタル化イリジウム(III)錯体を構造基盤として、ホール輸送性ハイブリッド青色りん光材料の創出に成功した。青色りん光材料は、OLEDの応用(ディスプレイや照明)にとってキーマテリアルであり、当該材料について特許出願もできたことは、本研究にとって大きな進展であると考えられる。また、当該材料を中心に研究を展開することによって、本研究の最終目標(両極型ハイブリッドりん光材料の創製と革新的素子構造による白色発光OLEDの創出)を達成する見通しが立ったことも大きな収穫である。さらに、平成26年度における白色発光OLEDの創出に向けて、赤色系りん光材料を開発できたことも、今後の研究の推進にとって有効であった。 一方で、予定通りに進捗せず、期待した成果が得られない項目もあった。特に、ホール輸送性ハイブリッドりん光材料への電子輸送性ユニットの付与については、電子輸送性ユニットを有するβ-ジケトナート補助配位子の合成に成功したものの、当該配位子を用いて合成した錯体は期待した発光挙動を示さなかったため、分子設計の修正を求められることとなった。しかしながら、両極型ハイブリッドりん光材料の分子設計の最適化に一定量の労力を費やすことは研究計画当初から想定の範囲内であり、今後は研究項目の絞り込みと研究協力者の増員によって、研究期間内に目標を達成できるものと思われる。 以上のような理由から、本研究は概ね予定通りの速度で進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度における研究進展のカギとなる項目は、電子輸送性ユニットの付与による両極型ハイブリッド青色りん光材料の分子設計と合成である。当該材料の開発を効率的に進めることができるように、分子モデリングや理論計算を補助的に用いながら合目的に分子設計を行う。コアとなるシクロメタル化イリジウム錯体でのキャリア再結合を効率的なものにするために、ホール輸送性ユニットと電子輸送性ユニットとを機能分離する形で配置する。コア錯体の発光機能を阻害しないような電子輸送性ユニットの選択とその導入方法を検討し、当該材料の適切な分子設計を考案する。電子輸送性ユニットの候補として、オキサジアゾールやオリゴピリジンなどの電子欠如型複素環を予定しているが、逆エネルギー移動によって青色りん光を抑制しないように、高い三重項準位を有する構造基盤を選択する。 次に、開発した両極型ハイブリッドりん光材料を用いて単一有機層からなるOLED デバイスを作製するが、研究目標(白色発光デバイスの作製とその高効率化)を研究期間内に達成するためには、デバイス評価を迅速に行うとともに、評価結果を速やかに当該材料の分子設計にフィードバックしなければならない。よって、必要に応じてデバイス作製に従事する研究協力者を増員し、材料開発担当の研究協力者と素子作製担当の研究協力者との連携を密にすることで、研究の進捗に遅滞が生じないようにする。 以上の研究推進方策に基づいて得られた成果のうち、公開可能な内容については講演や出版物を通して公表する。また、新規技術を含む知的財産については速やかに特許出願を行う。
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Research Products
(15 results)