2014 Fiscal Year Annual Research Report
無共溶媒液相合成法によるモノリス状シリカ系光学材料の開発
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24350109
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
梶原 浩一 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (90293927)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ガラス / シリカガラス / シルセスキオキサン / 無共溶媒法 / 蛍光体 / ポリシルセスキオキサン液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、(1)試薬の使用量削減と合成時間の短縮によるシリカ系材料の低環境負荷液相合成法の開発、(2)現在主流の気相法を凌駕する光機能性シリカガラスの合成と発光・レーザー材料への応用、(3)三官能アルコキシドからのポリシルセスキオキサン(PSQ)液体の生成機構の解明と応用分野の開拓、である。(1)に関しては初年度に基本技術をほぼ確立しているため、本年度も引き続き主に(2)と(3)に取り組んだ。 (2)に関しては、希土類とリンを共ドープしたシリカガラスにおいて、全ランタノイドについて直径数nmの希土類オルトリン酸塩ナノ結晶を含み、かつ粒径が小さいためRayleigh散乱のほぼ無視できるシリカガラスが合成できること、その紫外吸収端は希土類イオンのf-d遷移または電荷移動吸収によって支配されること、La系、Gd系、Ho系、Er系、Lu系、Y系ではこれらの遷移が高エネルギーシフトしているため紫外吸収端が真空紫外域(波長<200nm)まで高エネルギーシフトしていること、希土類イオンとしてGdとPrを共ドープした系で波長313nmのUV-B光を高効率に発光する透明紫外蛍光体が作製できることを見出した。希土類とアルミニウムを共ドープしたシリカガラスにおいて、これまでの定説と異なり、希土類イオンのまわりにAlイオンが選択配位することを見出した。液相法を用いることで、溶融法や気相法等では形成が困難である準安定構造を凍結できた可能性がある。 (3)に関しては、PSQ液体の粘度、分子量、NMR測定等の各種物性測定を行い、Siに置換した有機官能基の立体障害がPSQ液体の構造と物性に大きく影響することを明らかにした。また得られたPSQ液体は温度に対して粘度が大きく変化するFragile液体であり、熱可塑性材料として有用である可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光機能性ガラスの合成に関して、昨年度見出した希土類とリンが直径数nmのナノ結晶を形成する現象は、複数種の異なった作用をもつ希土類イオンを隣接させ、それらの間の高効率なエネルギー移動を利用した発光材料の開発に有用である。昨年度、発光イオンとしてTb3+イオン、光吸収を担うイオンとしてCe3+イオンを用いることで高効率緑色蛍光体が実現できたが、本年度は新たに前者にGd3+イオン、後者にPr3+イオンを用いた高効率紫外蛍光体が作製できた。また、希土類とアルミニウムを共ドープした系で、これまでの定説と異なり、Al3+イオンが希土類イオンに隣接してその溶解を促進していること、そのためガラスの透明化に必要なAl3+イオンの添加量が他の手法に比べて少なくて済むことが示された。いずれも、溶融法や気相法など他の手法では得られない高次構造・準安定構造をガラス中に形成するという本研究の目的に合致する成果である。一方で、課題であるSiOH基の低減に関しては、かなりな進捗はあったが試料の品質が今ひとつであり、引き続き改善に取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
希土類ドープシリカガラスに関しては、これまでに開発したTb-Ce系、Gd-Pr系以外にも有用な系が存在する可能性が高いため、引き続き組成探索と物性評価を行う。SiOH基濃度の低減に関しては、着実に進捗はしているので継続して研究に取り組む。PSQ液体に関しては基礎研究はほぼ終えたため、応用研究に取り組む。また、派生研究として、共溶媒を用いずに合成でき、かつ1週間以上安定に保存できるシリカ薄膜作製用溶液が実現されつつあるので、あわせて開発を行う。
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Causes of Carryover |
平成26年度に受賞し、年度内に使途を問わず自由に使用できる賞金を得たためその分研究費を節約できたことが次年度使用額が生じた主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
高価なため使用量を制限していた希土類試薬の購入や、応用研究を進めるうえで必要となる機器の整備に充てる。
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Research Products
(9 results)