2013 Fiscal Year Annual Research Report
ソルボサーマル合成による新規アルミノシリケートの創出・制御と触媒応用に関する研究
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24350110
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
池田 拓史 独立行政法人産業技術総合研究所, コンパクト化学システム研究センター, 主任研究員 (60371019)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長瀬 多加子 独立行政法人産業技術総合研究所, コンパクト化学システム研究センター, 主任研究員 (30357628)
日吉 範人 独立行政法人産業技術総合研究所, コンパクト化学システム研究センター, 主任研究員 (50415733)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ソルボサーマル反応 / ゼオライト / 層状ケイ酸塩 / イオン交換 / メソポーラス / タンパク吸着 |
Research Abstract |
ソルボサーマル反応を使って合成した-LIT型ゼオライトについて、イオン交換特性と結晶構造の関連について調べた。-LIT型ゼオライトに含まれるKイオンを他のイオン(Li, Na, Ca)に交換することで、結晶構造が大きく変化することが分かった。とくに-LIT型構造に固有で骨格中に存在するSiO-H-OSi水素結合が消失し、独立シラノール基に変化していることが分かった。つまり10員環細孔を塞ぐ“鎖”がなくなることでカチオン交換が起こっていると考えられる。一度構造変化した-LITゼオライトを、Kエトキシドにて再度イオン交換すると再びもとの構造に戻り、消失した水素結合も再形成されることが分かった。この現象はKエトキシドを用いたときだけ起き、KClを用いた場合は元に戻らないことも判明した。以上から、Kイオンがもたらすpore filling効果が構造変化の最も大きな要因であり、エトキシド処理がシラノール基と反応してSiO-H-OSi水素結合の形成に寄与しているという結論を得た。 次に既知の層状ケイ酸塩H-ileriteおよびKOH, Al-isopropoxideを原料とするソルボサーマル反応により、Si/Al=6の層状構造を有するアルミノシリケートの合成に成功した。この結晶構造が層状ケイ酸塩K-LDSと同形構造であること、固体NMRからAl原子が4配位だけでなく6配位を含むことからAl原子はアモルファスアルミナとして、K-LDSの外表面を覆っていることを突き止めた。Al含有K-LDSは、化学的にも比較的に安定でメソポーラスシリカのシリカ源に用いられる層状鉱物と結晶構造が類似している。そこで、これを界面活性剤と反応させたところSi/Al=2~3で細孔径が数nmのメソ多孔体が得られた。このメソ多孔体は高いタンパク吸着能を示し、優れた酵素固定化材料としての可能性を持つことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ソルボサーマル反応を用いた新規ミクロポーラス多孔体の開発とその応用が目標であるが、これまでに得た-LIT型ゼオライトの基礎物性について、多くの新しい知見を得た。様々なイオン交換条件を検討した結果、骨格構造中の水素結合の形成に有機溶媒の関与が大きいことが示された。それは-LIT型ゼオライトがソルボサーマル反応でしか得られない実験結果を支持し、ソルボサーマル反応での結晶化機構の理解に役立つものである。またCo骨格置換した-LIT型ゼオライトを触媒に用いた炭素燃焼反応において、雰囲気中にNOが含まれる場合は炭素燃焼温度が50℃以上低下することが分かった。これは、Coを含有させることで、排ガス中に含まれる一酸化窒素を炭素の酸化剤として利用でき、燃焼温度を低下させられることを意味する。さらに、-LIT型ゼオライトが簡単なポスト処理をするだけで別のゼオライト構造へ変化することも新たに見いだした。 またソルボサーマル反応を使って新たに高Al含有層状シリケート(Al-K-LDS)が得られ、それを原料に用いることで、従来の報告にはない非常に低いSi/Al比を持つメソポーラスアルミノシリケートの調製にも成功した。このメソ多孔体は、既存のメソポーラスシリカに比べ明確に優れたタンパク吸着特性を示し、また一度吸着したタンパク分子を安定にメソ構内に固定化できることが分かった。現在、Al-K-LDSを使ったメソポーラスアルミノシリケートの調製について最適化を進めている。 一方、ソルボサーマル反応中の結晶化機構を解明するための“その場観察FT-IR”は予定より開発が遅れている。高温反応チャンバーの新規作成・改良を行い、250℃の自己静圧下に耐えられるATR測定が可能になりつつある。しかし、48時間を超える長時間実験ではチャンバー内の溶媒がリークする問題が起こっていて、現在改良を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
-LIT型ゼオライトのポスト処理による他のゼオライトへの相転移的な構造変化について、現在相変化のためのポスト処理条件の最適化や相変化機構を詳しく調べている。これまでに処理条件により幾つかのゼオライト構造に変化させられることが分かっており、その中には従来天然物でしか報告されていないアルミノシリケート型ゼオライトも含まれている。これまでの研究から、-LITゼオライトは既存のゼオライトには無い性質を持ち、内包するカチオン種や水素結合による有無により構造安定性や耐熱性に大きな変化が現れることが分かってきた。このことは、-LIT型ゼオライトが準安定結晶相であることを端的に示している。 また、その場観察FT-IR測定によるソルボサーマル反応における結晶化の観察を進める。高温反応チャンバー付きATRユニットの耐久性を高めるための改良を行い、反応の均一性を高めるためにチャンバーの内容積の大容量化などの改良も併せて検討していく。ソルボサーマル反応を使った新規物質探索研究も継続していく。-LIT型ゼオライトの合成条件をベースにアルカリ源やシリカ源の組合せを変え合成を進めていく。 本年度得られたAl-K-LDSについては、それを原料に用いたメソポーラスアルミノシリケートの調製について最適化を進め、細孔径の制御、細孔構造の規則化、Si/Al比の制御について検討する予定である。加えてより大きな分子サイズのタンパク酵素固定化や酵素反応についても検討し、共同研究へと発展させたいと考えている。 加えて本テーマの最終年度となることから、これまで得られた実験結果をもとに論文執筆や学会発表等により成果を公表していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品購入および契約職員の人件費において、当初予定していた金額よりコストダウンが出来たため。また研究実施において、適時必要なものだけを購入するようにしたことから次年度使用額が生じた。 その場観察FT-IR装置の改良にかかる経費、依頼分析にかかる経費に割り当てる。
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Research Products
(9 results)