2012 Fiscal Year Annual Research Report
温度勾配を外場とする高分子の不可逆的分子拡散の解析
Project/Area Number |
24350122
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
喜多 理王 東海大学, 理学部・物理学科, 准教授 (90322700)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木原 晋 東海大学, 理学部・物理学科, 教授 (40191093)
新屋敷 直木 東海大学, 理学部・物理学科, 教授 (00266363)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高分子 / 熱力学 / 非平衡 / ソレー効果 / 分子ダイナミクス / 温度勾配 / レーザ計測 / 溶液物性 |
Research Abstract |
本研究は熱拡散型強制レイリー散乱法(TDFRS法)を用いて、熱的に非平衡な状態にて顕在化する高分子の輸送現象(分子拡散と構造形成現象)を調べる。すなわち(1)高分子溶液に外場として安定な温度勾配を与え、熱平衡状態から離れた条件にて起こる濃度勾配形成現象(ルードヴィッヒ・ソレー効果)のデータ取得を行い、(2)このような構造形成現象を支配する主な因子であろ物質流やエネルギー流、そして分子レベルでの相互作用が果たす役割の詳細を解析する。さらに(3)これまで申請者によって見出された異常なルードヴィッヒ・ソレー効果(負のソレー係数)の分子論的メカニズムの解明を目指す。以上の事により、非平衡熱力学分野に実験データを提供するとともに高分子物理学や非平衡熱力学に新たな知見をもたらし、これら分野の発展に寄与することを目的としている。 初年度は、単糖、オリゴ糖、環状オリゴ糖、多糖類の水溶液を用いた測定によりデータ取得を実施した。この結果、温度勾配を駆動力とする分子の輸送係数が、溶質の分子量や分子サイズによらず符号反転温度からの距離のみに依存することが明らかになった。ここで用いたすべての試料は、最小構成単位がグルコースであることから、輸送係数の決定因子はこれまで知られていた分子量や分子サイズだけではなく、グルコースと水分子との分子レベルでの相互作用に強く依存することが分かった,一方、これら糖水溶液においてもソレー係数が負の値を示すことから、ソレー係数の符号反転現象には水素結合が関係していることが確かめられた。 並行して合成高分子を用いた測定(熱平衡系および非平衡系)を実施し、水系と非水系での比較を行い、ルードヴィッヒ・ソレー効果の分子論的な理解のための基礎データが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱拡散型強制レイリー散乱法(TDFRS法)を用いたデータ取得および再現性の確認という実験研究の基本事項において、装置の不具合発生などの問題が生じなかったことが順調な進展のひとつの要因であると考えている。 また、調べている現象について新たな知見が得られたことが、順調に進展していると評価した要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の計画が順調に推移したことから、今後の計画については大きな変更はない。一方、今年度新たな知見が得られたことから、これをさらに詳細に調べる実験と解析にも着手する。
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Research Products
(52 results)