2013 Fiscal Year Annual Research Report
イオン注入による欠陥制御を利用した圧縮歪みシリコンの実現と高正孔移動度素子応用
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24360001
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宇佐美 徳隆 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20262107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有元 圭介 山梨大学, 医学工学総合研究部, 准教授 (30345699)
澤野 憲太郎 東京都市大学, 工学部, 准教授 (90409376)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 歪みシリコン / ヘテロ構造 / 分子線エピタキシー |
Research Abstract |
本研究の目的は、高品質な圧縮歪みシリコン/シリコンカーボンヘテロ構造の形成と超高移動度デバイスへの応用である。その骨子はシリコン層に圧縮歪みを導入することにあり、そのためシリコンカーボン層の格子歪みを緩和させる必要がある。従来の手法では、歪み緩和シリコンカーボン層の形成時に導入される結晶欠陥がチャネル層の電気伝導特性に悪影響を与えてしまう。また、従来法では様々な要因により歪み緩和シリコンカーボン層の形成条件が限定されてしまい、膜質の観点から成長条件を最適化する余地がほとんどない、という問題を抱えている。そこで本研究では、イオン注入法を用いて結晶成長中に素性の良い結晶欠陥を誘導し、結晶欠陥密度を低く保ちながら歪み緩和を促進することを目指している。 これまでの研究において歪み緩和促進効果は確認されていないが、膜質改善効果を示す結果が得られ始めている。従来法では、部分転位に作用する分解せん断応力のバランス関係から転位が拡張し、面欠陥が形成される傾向が強い。面欠陥は結晶中を自由に動けないため、結晶成長の過程で消滅することがなく、チャネル層であるシリコン層での電気伝導特性に悪影響を及ぼす。これに対し、イオン注入法を用いて成長した試料では面欠陥密度は減少し、転位の形成が支配的となる傾向が見られた。これは、イオン注入法によって膜中に完全転位ループが形成され、この転位ループを構成する部分転位が同一滑り面上を運動し、最終的に完全転位としての構造をもった結晶欠陥が形成されるためであると考えている。今後、結晶成長条件を系統的に変化させ、イオン注入法が結晶欠陥の形成過程に及ぼす影響およびそのメカニズムを詳細に調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者の異動に伴い、装置の移設・保守などで新たな試料が作製できない時期があったものの、イオン注入法を用いて成長した試料で、面欠陥密度の減少が確認されるなど、結晶欠陥の形成過程について新たな知見が蓄積されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
イオン注入法による結晶欠陥構造の変化は、少数の試料でしか見られていない。結晶欠陥の形成は成長温度に大きく依存すると考えられるため、平成26年度の研究においては結晶成長条件に関して系統的なデータをとり、イオン注入法が結晶欠陥の形成過程に及ぼす影響およびそのメカニズムを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者の異動があり、本研究に利用する主要設備である結晶成長装置を始めとする設備の移設・立ち上げを行う必要があった。そのため、予定していた研究を実施できない期間が生じた。そのため、成長実験や試料の評価に必要な経費の支出を繰り越すこととしたため。 本年度は、イオン注入法が結晶欠陥の形成過程に及ぼす影響およびそのメカニズムを詳細に調べるため、系統的に条件を変化させた多数の試料を作製し、構造評価やデバイス試作を行う予定である。そのための経費、および成果発表に主として支出する予定である。
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Research Products
(6 results)