2013 Fiscal Year Annual Research Report
電極が不要な禁制帯内の包括的マルチレベル分光手法の開拓
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24360005
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
鎌田 憲彦 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (50211173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 武司 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (40509121)
平山 秀樹 独立行政法人理化学研究所, 平山量子光素子研究室, 主任研究員 (70270593)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | フォトルミネッセンス / 半導体 / 非発光再結合準位 |
Research Abstract |
当研究室で開発した2波長励起フォトルミネッセンス(PL)法を用いて、発光材料の内部量子効率を定める非発光再結合(NRR)準位の定量評価を継続している。平成25年度は新たに低温光学クライオスタットを整備し、4Kから室温までの禁制帯内励起(BGE)効果の温度依存性測定が可能となった。蛍光体での熱ルミネッセンスでは複数のキャリア捕獲準位が検出されており、NRR準位と混在する系での各々の発光特性に及ぼす寄与を分離する準備が整った。 波長430nmのInGaN単一量子井戸試料の2波長励起PL測定を行い、BGE照射によるPL強度の増加を観測した。BGEエネルギー依存性から、1.17eV付近にNRR準位が分布し内部量子効率を低下させていることを示した。BGE強度依存性から、トラップ飽和効果を用いた準位パラメーターの導出を行った。 成長温度880℃および920℃の深紫外域組成(波長270nm台)InAlGaN多重量子井戸試料の2波長励起PL測定を行い、前者はPL強度の低下(2準位モデル)、後者は増加(1準位モデル)を観測した。複数の半導体レーザー、固体レーザー光源を用いてBGEエネルギー依存性を調べた。現時点では1.17eVでの変化が最大であり、NRR準位がこのBGEエネルギーで増速することが示された。Inの微量添加により発光効率増大が期待されるが、InGaNとAlGaNの最適成長温度は異なる。このためInAlGaNの成長温度設定は重要であり、NRR準位分布に大きな影響を与えていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに測定試料の結晶成長は順調に進んでいる。測定では新たに低温光学クライオスタットを整備し、BSON蛍光体の熱ルミネッセンスによるキャリア捕獲準位の検出、InGaN、AlGaN、InAlGaN量子井戸の2波長励起PLによるNRR準位検出を進めており、成長条件によるBGE効果の相違等、重要なデータが得られている。 一方、PL測定におけるバンド間励起(AGE)用のSHG-Arレーザーの出力が低下し一時発振不能となった。このため長期間状況調査、再調整に時間を費やしたが、現在復帰させることができ、出力を継続調査中である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度としてキャリア捕獲準位、NRR準位が混在する系での分離評価に向け、集中的に試料選択と光学測定を進める。BSON蛍光体、AlGaN量子井戸についてキャリア捕獲、再結合モデルを検討し、電極不要の光学的定量評価手法としての2波長励起PL法の適用性を拡張して論文にまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2波長励起フォトルミネッセンス測定に際して、AGEおよびBGEの2つの励起光の観測波長領域への迷光成分を除去するための遮光機構、光学フィルタ等が必要である。自作遮光系と既存光学フィルタを用いて比較的良好な遮光特性が得られ、計画段階で予測した新規購入分が減少した。その一方、下記に述べる励起光源の不調が生じ、次年度に助成金の一部を繰り越すこととした。 平成25年度にフォトルミネッセンス励起用のSHG-Arレーザーの出力が低下するという不調が生じた。非線形結晶を用いて488nmの基本波の2倍高調波である波長244nmの深紫外光を発振する構成のため、最悪の場合は300万円以上の支出が予想される。現在測定の度に共振器調整を行いつつ、出力の変動経緯を観測、記録中である。サプライヤーと連絡を取りつつ最善の方策を検討しており、場合によっては科研費から一部を支出することを想定して研究を進める。
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Research Products
(12 results)