Research Abstract |
平成24年度は,以下の2項目の成果を得た. 1.本研究で提案する光スイッチに用いる五層非対称結合量子井戸(FACQW)において,残留不純物イオンで形成された空間電荷層による電界強度の場所依存性により,電界誘起屈折率特性が大きく劣化してしまう問題があった.これに対する対策として,コア層の場所毎にFACQWの構造を変え,動作電界領域を変化させたものを組み合わせることで,特性劣化を抑制することができるかを理論的に検討した.その結果,コア層の中央部にはFACQWを配置し,端部には対称結合量子井戸層を配置することにより,電界誘起屈折率の劣化が十分抑制できることを見いだした.また,量子井戸導波路の偏光無依存化を実現するため,FACQWおよび対称結合量子井戸の井戸層に伸張歪みを導入した構造を検討し,偏光依存性を解消しつつ,さらに動作電圧を低減できる構造を考案した.これにより,提案する光スイッチの構造がほぼ確定できた. 2.電子ビームリソグラフィによるマイクロリング共振器の作製プロセスの確立を行った.マイクロリング共振器部における位相変化増大効果は,マイクロリング共振器1周当たりの損失が小さいほど大きくすることができる.そこで,周回長を150ミクロン程度まで短縮化したマイクロリング共振器の試作を目指した.バスライン導波路とリング導波路の結合効率の制御性を改善するため,これまで行っていたフォトリソグラフィと電子ビームリソグラフィの組み合わせ描画から,全ての描画について電子ビームリソグラフィを利用する描画に変更し,素子作製プロセスを検討した.その結果,全電子ビームリソグラフィによる高精度なマイクロリング導波路作製が可能であることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画であった,多重量子井戸の偏光無依存化を実現できる構造を理論計算により設計を終えることができ,またマイクロリング共振器による位相増大効果についても,単一マイクロリング共振器を備えたマッハ・ツェンダー光変調器により実証することができた.従って,当初の計画どおり進展しているといえる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1組のマイクロリング共振器を有するマッハ・ツェンダー光変調器の設計,試作とその光変調特性の評価を行う.プッシュプル動作を行うため,マイクロリング共振器の共振波長を精密に制御する必要がある.電子ビーム露光法を用いて作製精度を改善するとともに,マイクロヒーターによる共振波長の微調整機構も設ける予定である.若干の未使用額が生じたが,これを平成25年度予算と併せて消耗品購入に充てる.
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