2013 Fiscal Year Annual Research Report
超広帯域コヒーレント中赤外光を用いた新しい分光法の開拓
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24360030
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
藤 貴夫 分子科学研究所, 分子制御レーザー開発研究センター, 准教授 (20313207)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 応用光学・量子光工学 / 高性能レーザー / 量子エレクトロニクス / 超短光パルス |
Research Abstract |
中赤外領域(3--20μm)は、多くの分子振動に共鳴しており、分子の指紋領域といわれている。分子分光にとって、極めて重要な波長領域であるが、ラマン分光と比べて、低レベルな分光しか行われてこなかった。その大きな理由は、中赤外領域の検出器の性能が、可視光領域のものと比べて非常に低いことである。 本研究では、研究代表者の研究室で独自に開発した超広帯域単一サイクル中赤外光パルスを光源とした新しい中赤外分光法を開拓することを目的としている。本研究で提案している超広帯域コヒーレント中赤外光と可視光用検出器を使った分光法により、いままでの中赤外分光ではできなかった、桁違いに高速なデータ取得が可能となるという結果を期待している。 本年度は、超広帯域中赤外光パルスの非線形吸収分光への応用を行った。研究代表者が開発した超広帯域中赤外コヒーレント光の発生装置から発生したスペクトルは、2μmから20μmまでバンド幅が広がっており、従来のコヒーレント光(光パラメトリック増幅器など)のスペクトル幅に比べて、桁違いの幅である。この装置で発生する超広帯域コヒーレント中赤外光をプローブ光とし、チタンサフィイアレーザーから発生する800nmのパルスをポンプ光とした超高速ポンプ・プローブ分光を行った。プローブ光のスペクトルを計測するときには、赤外光のスペクトルを可視光へ波長変換し、可視光用分光器で検出することを行った。そのような超広帯域中赤外光パルスのスペクトル幅を保ったまま、可視光に変換するためには、試料としては、Ge(ゲルマニウム)を用いた。ポンプ光によって、Geのフォノンに起因する遠赤外の吸収(300cm-1)がピコ秒の時間スケールで変化する様子が観測できた。このように、新規広帯域中赤外光源が、非線形分光に利用できることが示された。この結果から、中赤外分光が、新たな展開を迎えることに期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書では平成26年度に非線形分光を行う予定であったが、一年前倒しにして行うことができた。平成26年度は、平成25年度に行う予定であった全反射プリズムを使った赤外分光を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
全反射プリズムを用いた全反射吸収分光を行う予定である。全反射吸収分光では、プリズム上に試料をのせるが、その際に、プリズム上部から試料へ様々なアクセスが可能となる。平成26年度は、2種類の溶液を混合し、その反応過程を実時間での赤外スペクトル計測によって観測することを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度には全反射吸収分光を行うことを計画していたが、次年度に行う予定の非線形分光を先に行うことにしたことが理由である。非線形分光は当初、前年度までに製作した装置を大幅に変更することを想定していたが、想定よりも小さい変更で済むことがわかり、それを優先させた。本年度に使用予定であった予算は、次年度に繰り越した。 次年度は、本年度行う予定であった全反射吸収分光を行うので、それに必要な予算を使用する予定である。
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Research Products
(13 results)