Research Abstract |
超伝導バルク磁石の均一性を向上させるためには,その着磁のプロセスを明らかにする必要があるため,クライオスタット内に装着した円環状のバルク磁石(c軸配向のシングルドメインEuBa_2Cu_30y結晶,外径60mm,内径28mm,高さ20mmを6枚積層)を,NMR用超伝導磁石が発生する均一な静磁場(4.74T)の中に置き,バルク磁石を100Kから50Kまで冷却しながら,バルク磁石内の静磁場分布をMRIによって計測した,バルク磁石の超伝導転移温度は93Kであり,計測を行った温度は,100,93,84,70,60,50Kとした.その後,磁石温度を50Kに保った状態において,NMR用超伝導磁石による静磁場を徐々に減少させ,外部磁場強度が4.74,4.0,3.0,2.0,1.0,0Tのときのバルク磁石内の静磁場強度分布を計測した.なお,静磁場計測には,3Dスピンエコー法を用いた位相シフト法と,硫酸銅水溶液ファントムを用いた.また,静磁場分布は,球面調和関数によるフィッティングにより,その不均一成分を評価した.以上の実験の結果,以下の事が明らかとなった. (1)バルク磁石が超伝導転移点以下になると,勾配磁場コイルが発生する磁場は,バルク磁石によってスクリーニングされ,結果として,試料の位置における勾配磁場強度が30~40%程度低下した. (2)外部磁場中での冷却のプロセスにおいて,静磁場均一性は,10ppm(100K)から約4ppm(80K以下)へと向上した.ただし,プロトンの共鳴周波数(202MHz)は,ほとんど変化しなかった. (3)外部磁場強度を4.74TからOTへ減少させる過程において,共鳴周波数は,202.24MHzから202.18MHzへと約0.03%減少し,静磁場不均一性(peak-to-peak)は,4ppmから約110ppmへと上昇した. 以上の結果から,超伝導バルク磁石内に誘起された超伝導電流分布に関し,貴重なデータが得られた.
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