2013 Fiscal Year Annual Research Report
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24360035
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
百生 敦 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (20322068)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 位相コントラスト / 位相イメージング / シンクロトロン放射光 / X線 / Talbot効果 / トモグラフィ |
Research Abstract |
従来のX線透視画像のコントラストは試料中の構造によるX線の減弱の大小に依存している。そのため、X線に対して比較的透明な物体に対してはあまり有効とはされない。生体であれば軟組織、材料系であれば高分子がそれにあたる。X線位相イメージングは被写体によるX線の僅かな屈折を画像形成に利用するものであり、上記のX線画像の欠点を緩和する方法として注目されてきた。X線位相イメージングを実現するためには、複数のX線透過格子を用いるX線Talbot干渉計あるいはX線Talbot-Lau干渉計を用いる。方法ではこれまで静止した被写体の撮影に適用、未だ動的な撮影には展開されていない。このフロンティアを切り開くのが本課題の目的である。 動的位相イメージングを実現するために、二つのアプローチを用意している。第一は、広いバンド幅で機能するX線Talbot干渉計の特徴を活かして、白色シンクロトロン光を用いる明るい光学系の採用と、CMOSを用いた高速X線カメラによる高速撮影である。第二は、繰り返し現象を対象に、ストロボ型X線位相イメージングの開拓である。 前者については、その応用として、高分子ブレンドに現れる相分離構造を三次元的に時系列観察する実験を開始した。ブレンド試料を200℃程度にランプ加熱・温度保持した状態で、CT計測のために回転させる装置を開発し、X線Talbot干渉計と組み合わせて動作できるようになった。テストランでは所望のシーケンスで位相CT画像が得られることを確認している。X線透過格子サイズで決まる視野の問題や試料調整の課題が残っており、次年度はこれを解決して撮影を行う。 後者については、シンクロトロン放射光のパルス性を利用し、これまでチョッパを用いて達成したものより高い時間分解能のストロボ型X線位相イメージングの実現を目論んだが、放射光施設の運転モードの変更により実験が中断している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
シンクロトロン放射光のパルス特性を利用したストロボ方式X線位相イメージングの実験を行うことができなかった。蓄積リングのRF信号を分周する装置を準備したが、KEK,PF蓄積リングの運転が平成25年秋よりシングルバンチモードで運転されなくなり、実験が行えない状況になっている。現在は、シングルバンチモードとマルチバンチモードを融合させたハイブリッドモードでの運転となっているが、これを使うためにはあらたに高速シャッターを準備しなければならない。しかし、予算的に対応が難しく、対案としては、PF-AR蓄積リングの使用が考えられる。ただし、本研究のために申請・採択されているシンクロトロン放射光共同利用実験課題はPFでのものであるので、新規にPF-AR用の共同利用実験課題を申請しなければならない。現在そのための準備を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
動的位相トモグラフィの応用として、高分子ブレンドにおける相分離観察を引き続き実施する。これまで準備が着実に進捗しており、近く予定の成果が得られるものと考えている。別の応用として、ダイラタント現象の観察も行う。これは、ダイラタント流体への力学的外場が与えられたときに、Talbot干渉計のvisibility信号に変化が現れることを利用するものであるが、ストロボ方式によるS/N向上の取り組みも含めて、ダイラタント現象の理解に有効な情報抽出を試みる。 シンクロトロン放射光のパルス性を利用したストロボ型X線位相イメージングについては、PF-ARに共同利用実験課題を申請し、平成26年度後半において、そのデモンストレーション実験を成功させることを狙う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
シンクロトロン放射光のパルス性を用いたストロボ型X線位相イメージングの実験が、KEK-PFの運転モードの変更により実施できなくなった。 PF-ARの共同利用実験課題を申請し、平成26年度秋以降になってしまうが、シンクロトロン放射光のパルス性を用いたストロボ型X線位相イメージングの実験に使用する。
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Research Products
(10 results)