2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24360051
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
國枝 正典 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90178012)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三村 秀和 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30362651)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 電解加工 / 微細加工 / 超短パルス / 静電誘導給電 / 放電加工 |
Research Abstract |
静電誘導給電法により、数nsのパルス幅の電解加工を行い、50ミクロンの内径の微細穴加工ができるという原理を平成24年度に実証した。それを受けて、極間の平均電圧波形を検出することにより、工具電極のサーボ送りが行える制御回路を作成した。そして、サーボ基準電圧ごとに、サーボゲインの最適値を求め、サーボ基準電圧が低いほど加工速度が大きく、加工間隙がせまくできることを見出した。 一方で、サーボ基準電圧を低くし過ぎると、工具電極端面と加工穴底面とが接触し、回転している工具電極による擦過痕が穴の底面上に生じる。また、加工間隙がせまいため、放電の発生による放電痕が生じ、電解加工特有の滑らかで熱影響層のない加工面を得ることが困難になることが分かった。よって、放電が生じる条件を明らかにする必要があることが分かった。 また、本加工法は両極性加工であるので、工具電極の消耗が生じるはずである。そこで、工具電極の消耗について実験的に調べたところ、工具電極と工作物に同じ材料を用いたとしても、工具電極の消耗が工作物の除去量に比較して無視できるほどに少ないことを見出した。その原因を考察した結果、平面状の工作物に比べて微細軸状の工具電極は、加工間隙で生じるジュール発熱からの熱流束に対する熱抵抗が大きく、表面温度が上昇し易いことが原因であると推論した。そこで、工具電極と工作物に同形状の微細軸を用い、一方をヒータで故意に加熱すると、加熱された側の電極の消耗量が減少することを見出した。しかし、電極温度が高いと消耗量が減少する理由については解明に至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
工具電極送りの自動化については、サーボ送り制御回路を製作し、基準サーボ電圧に基づいて加工速度の制御が可能になったことで、ほぼ目的が達成されたと言える。 また、加工条件の最適化による加工特性の向上については、主に工具電極消耗について研究を行った。その結果、両極性パルスであるにもかかわらず工具電極消耗がほとんど見られないことが分かり、その不可解な現象の解明にかなりの労力と時間を集中させた。その結果、工具電極と工作物の形状の違いが影響していることが分かり、伝熱に対する熱抵抗の違いが電極表面温度に違いをもたらすことが原因であることまで解明できた。これは25年度の交付申請時には想定できなかった意外性のある成果であり、表面温度の上昇が消耗を減らす原因は解明できていないものの、達成度の高い成果であったと考えられる。 工具電極の高速回転の影響については、過去に静電誘導給電法を用いた微細放電加工の研究を行ったときの、高速スピンドルと非接触給電装置を利用し、高速回転する工具電極に非接触で給電して微細電解加工を行うための装置を製作した。実際に加工実験は行えなかったが、平成26年度に実験を行うための準備は整った。 加工間隙の周期的変動の効果を調べる実験については、工作物に変位を与えるための圧電アクチュエータを準備した。サーボ送り制御回路が完成したことによって、加工間隙の周期的変動が加工速度に与える影響が評価できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
形状効果がもたらす電極表面温度の違いが、工具電極消耗に影響を及ぼすことが明らかになったので、電極表面温度が除去速度に影響を与える原因を理論的に解明する。電気二重層のキャパシタンスの温度依存性が最も可能性の高い原因である。 放電加工と比較して電解加工が有利な点は熱影響層が生じないことである。放電加工で微細軸を加工すると、残留応力によって微細軸が変形するので、サブミクロン径の微細軸の放電加工は困難である。そこで、本加工法により電解加工によってサブミクロン径の微細軸加工を行う。また、加工ができれば、得られた微細軸を用いて、サブミクロンの微細穴の加工を試みる。 加工速度の向上、加工間隙の縮小化による微細化限界の向上のため、工具電極の高速回転や、工作物の加振による加工間隙の周期的変動の効果を調べる。 加工条件を変えることによって、同じ静電誘導給電法を用いて、放電加工と電解加工の加工モードの切り替えを行える、ハイブリッド加工の可能性を研究する。これによって、放電加工で荒加工を行い、電解加工で仕上げ加工を行ったり、あるいは放電加工と電解加工が同時に生じることにより、加工速度の増大が達成できる可能性がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現有の高速バイポーラ電源では電圧・電流容量、周波数応答に制限があり、容量の大きな電源を平成25年度に購入する予定であった。しかし、どれくらいの余裕を見て機種を選定すればよいかが決定しきれず、また必要な仕様を満たす機種もなかったため、購入を躊躇していた。 平成25年度の基礎研究の結果、研究の遂行に必要な高速バイポーラ電源の仕様が確定しつつあるため、平成25年度の購入の予定通り、高速バイポーラ電源(\912,600)を購入する。
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Research Products
(3 results)