2013 Fiscal Year Annual Research Report
極低凝着・耐摩耗性を有する単分子薄膜潤滑表面の創製のための総合的研究
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24360062
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
谷 弘詞 関西大学, システム理工学部, 教授 (40512702)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多川 則男 関西大学, システム理工学部, 教授 (50298840)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | トライボロジー / ヘッドディスクインターフェース / テクスチャ |
Research Abstract |
極低凝着で耐摩耗性・撥水性に優れた分子薄膜潤滑表面の構造を創生するために、当該年度では、以下の検討を行った。 1. 微細テクスチャを付与した表面の耐摩耗性・凝着力変化・撥水性変化の確認のため、撥水表面、親水表面、およびその複合表面についてサンプル作製を行った。とくに複合表面の創生では、撥水表面上のパラフィンのDewetting現象を用いて、サブミクロンオーダのマスクを形成して、その部分のみを撥水化するプロセスを開発した。これらのサンプルを用いて、摩擦試験を行い、親水性表面では摩擦力が空気中・水中ともに高いこと、耐摩耗性が悪いことを確認した。 2. 計画では、微細テクスチャとDLC膜との組合せによる耐摩耗性向上効果の確認を行う予定であったが、DLC膜では透過性を損なうため、SiO2膜との組み合わせで、耐摩耗性評価を行った。その結果、突起の比率の最適な領域で耐摩耗性が向上することが分かった。 3.前年度に引き続き、PFPE潤滑剤の末端基が両末端・片末端のものを用いて、その複合膜の摩擦力・凝着力を複合比率を変化させて検討した。その結果、複合割合を最適化することで、片末端PFPE潤滑剤の摩擦係数低減効果が発現して、それぞれの潤滑剤を単品で使用する場合に比べて摩擦力が低くなることが明らかとなった。この結果は、磁気ディスクなどの超薄膜潤滑膜の設計指針として非常に重要な知見である。 4.超薄膜PFPE潤滑膜の摩擦力・凝着力の温度依存性を調べる中で、ある温度に達すると摩擦力が急激に低下する現象を確認した。これは、従来考えられている境界潤滑膜の温度依存性とは異なる現象であり、今後さらに調査して、そのメカニズムを追及する。 5.プラズモンセンサの開発は、金をナノアイランド状に成膜する条件を検討して、ある膜厚で成膜するとラマンスペクトル強度が100倍以上に表面増強されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画の項目は、研究をほぼ予定通り遂行して、一定の成果を得た。両末端と片末端のPFPE潤滑剤を混合した複合潤滑膜での摩擦力低減効果は、新たな知見であり、ヘッドディスクインターフェースにおける潤滑膜設計の設計指針の一つとなると考えられる。また、超薄膜PFPE潤滑膜の摩擦力・凝着力の特異な温度特性は、研究計画にはなかったが、重要な知見であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究計画に基づき、以下の研究を進める。1. 平成25年度で検討してきた撥水性・親水性複合表面で微細テクスチャとの組み合わせで、表面の耐摩耗性・凝着力変化・撥水性変化を確認して、産業界へのフィードバックを検討する。2. ナノパターン上でSiO2膜との組合せによる耐摩耗性向上効果を確認し、最適テクスチャー形状の設計指針を明らかにする。 さらに、超薄膜PFPE潤滑膜の摩擦力・凝着力の特異な温度特性について、検討を継続して、脂肪酸による境界潤滑膜のような温度特性と比較して、その現象を明らかにする。併せて、PFPE潤滑膜・極薄膜DLC保護膜の摩耗について、プラズモンセンサを用いて、詳細解析を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、アルバイトの謝金を予算化していなかった。しかし、研究の過程で、計画通り実験を行いデータを取るためには、アルバイトを雇用する必要が出てきたため、物品費などを削減して、謝金に充当した。そのため、予算とずれが出てきてしまい、次年度への繰り越しが発生した。 次年度使用額は引き続きアルバイトを雇用するために充当し、次年度当初予算は計画通りに使用する予定である。
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