2013 Fiscal Year Annual Research Report
金属ナノ粒子の革新的な用途展開を図る凝集塊サイズ制御手法の開発
Project/Area Number |
24360077
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
齊藤 卓志 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (20302937)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 金属ナノ粒子 / 凝集コントロール / 昇温速度 / 加熱時間 / 界面張力 |
Research Abstract |
本研究では,金属ナノ粒子の凝集状態を加熱に代表されるような外的操作により,能動的に制御することで,発現する機能をコントロールすることを目指している.平成25年度は,前年度に引き続いて銀ナノ粒子を検討対象として,熱的操作による凝集防止層の除去過程のモデル化を行うとともに,その後の凝集発達により銀ナノ粒子が塗布された基板表面の濡れ性が変化することを明らかにした. 意図しない銀ナノ粒子の凝集を防止するために,粒子表面に導入されている有機コート層の熱分解挙動を明らかにするため,試料セルに取り分けた銀ナノインクを十分に乾燥し,示差操作熱量測定装置を用いて,温度範囲30~300℃,昇温速度1~8℃/minの条件で熱分析を実施した.その結果,昇温速度の増加により熱分解の発熱ピークが高温側へシフトすることを確認した.得られた結果にKissingerの関係式を適用することで,凝集防止層の熱分解反応における活性化エネルギーならびに頻度因子をそれぞれ96.5 kJ/molと4.30×10E09と算出した. 基板表面の濡れ性に関する実験では,シリコン基板に銀ナノインクをスピンコートし,室温環境で24時間以上乾燥させた後,処理温度190℃,処理時間10,20,30,60分間として,得られた試料表面に対する純水の界面張力を測定した.また,試料表面を電子顕微鏡により観察し,銀ナノ粒子の凝集状況をフラクタル次元で評価した.その結果,処理時間の延長により銀ナノ粒子の凝集が進行し,フラクタル次元が小さくなることで,界面張力が増加することを示した.これはナノ粒子の凝集が進行することで試料表面が平滑化し,水との接触面積が低下したことが原因と考えられた.すなわち,熱処理により銀ナノ粒子の凝集をコントロールすることで,表面の濡れ性が制御できる可能性が示唆されたと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金属ナノ粒子の凝集をコントロールするために,粒子表面の凝集防止有機コート層の熱分解状況を明らかにすることができた.また,その後に生じる粒子凝集の進行状況をフラクタル次元解析により,評価できることを確認した.さらには,凝集状況の違いにより,金属ナノ粒子が塗布された基板表面の濡れ性が変化することを実験的に確認した.以上の成果から,おおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
金属ナノ粒子が塗布された表面の濡れ性を自在にコントロールできるようにすることを目指し,金属ナノ粒子層の厚さ,熱処理温度,熱処理時間といったプロセス条件の違いが与える金属ナノ粒子層の表面エネルギーへの影響を明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
金属ナノ粒子が塗布された基板表面の濡れ性を評価する装置の導入に際し,必要な機能にしぼった装置とすることで購入価格を抑えることができた.また,研究内容が熱分析と電子顕微鏡観察が中心となったため,消耗品支出を抑制することができた.以上により,平成25年度は次年度への繰越が生じた. 平成26年度は,マイクロディスペンサにより金属ナノ粒子を含むコロイド液をターゲットとなる基板に二次元的に走査しながら間欠的あるいは連続的に塗布するシステムの構築を目指しており,当該システムの構築に際し必要となるフレーム材やステージなどの購入に使用する予定である.
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