2013 Fiscal Year Annual Research Report
不凍タンパク質とイオンの協同効果による氷スラリー流中の氷粒子成長の高度制御
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24360081
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
萩原 良道 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (50144332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲田 孝明 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (60356491)
角田 直人 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (70345437)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 熱工学 / 結晶成長 / 氷スラリー流 / 協同効果 / マイクロスケール伝熱 |
Research Abstract |
小型分散高効率熱交換システムの開発や食品材料などの保存法開発に極めて有効である、微細な氷粒子を多数含む水(氷スラリー)の流れにおける氷粒子の長期間安定化を最終目標とし、氷スラリー流に添加した、イオンと不凍タンパク質の影響を解明することを目的とする。第2年度である平成25年度は、以下の結果を得た。 1.設備備品として購入した共焦点レーザー顕微鏡のステージに、微細流路を固定した冷却を取り付け、顕微鏡観察下において、氷スラリーの流れと温度の調整に問題の無いことを確認した。 2.近赤外光の吸収度の測定を基にした非接触温度計測を試みた。その結果、測定温度範囲が同じであっても、より薄い液膜の計測の場合に最適であった近赤外光の波長1912 nmは、微細流路の計測には、必ずしも最適でないことが明らかになった。そこで、近赤外分光器を借用して金赤外光スペクトルを調べたところ、温度依存性の高い最適な波長は、1415 nm であることが明らかになった。そこで、1415 nm のバンドパスフィルターを購入した。 3.氷スラリー流の安定化のために添加したイオンの影響を調べる前段階として、過マンガン酸ナトリウムと不凍タンパク質の希薄混合水溶液の一方向凝固実験を行った。その結果、成長する界面近傍において、過マンガン酸イオン濃度が上昇しないこと、不凍タンパク質の濃度が上昇すること、これらは単独の水溶液の濃度変化とは逆であることが明らかになった。さらに、希薄混合水溶液の界面温度の低下が界面速度に依存すること、界面速度が低いほど界面温度低下が著しいことが明らかになった。 4.分子動力学シミュレーションを行い、イオンと不凍タンパク質の両方から影響を受ける水分子の運動が停滞することを明らかにした。また、フェーズフィールド法を用いて、氷スラリー流の熱伝達に関する数値シミュレーションを実行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共焦点レーザー顕微鏡の走査の習熟に時間がかかったため、温度、溶質濃度、速度を変えた系統的な計測はできなかったが、さまざまな測定や数値シミュレーションを行い、多くの新たな知見を得た。これらの知見をもとに、効率的に測定できるめどが立ったので、全体としておおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に達成できなかった項目については、速やかに実施する。これと平行して、研究計画書に記載の平成26年度研究実施計画の項目についても、すでにえらた知見をもとに、すべて実施するよう、最大限の努力払う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
氷スラリー流の予備検討として行った一方向凝固実験では、不凍タンパク質の使用量が凍りスラリー流のそれより少ない。そのため、不凍タンパク質の使用量は、当初予定より少なくて済んだ。したがって、その他の項目にあげた不凍タンパク質の合成の外部委託費が、当初予定額を下回った。これが、未使用額が生じた主な理由である。 H25年度に行えなかった氷スラリー流の計測を行うので、当初計画より不凍タンパク質合成委託費が増える。その費用を支払うために、前年度未使用額をすべてを、その他の項目にまわす。
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