2013 Fiscal Year Annual Research Report
自励振動に対する動吸振器の動作原理の解明と合理的な最適設計法の開発
Project/Area Number |
24360091
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
近藤 孝広 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80136522)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 健一郎 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (80264068)
石川 諭 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60612124)
宗和 伸行 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40304753)
盆子原 康博 宮崎大学, 工学部, 准教授 (10294886)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 機械力学・制御 / 自励振動 / 動吸振器 / 安定解析 / 時間遅れ系 / 係数励振 / 非対称行列 / 最適設計 |
Research Abstract |
自励振動に対する動吸振器は,適切に設計すると防振対象だけでなく動吸振器も全く振動しなくなるという特長を有する反面,動作原理が明確化されていないという問題が残されている.本研究では,自励振動に対する動吸振器の動作原理を理論的に解明するとともに,合理的な最適設計法を開発する.本年度の実施項目は次の通りである. 1.複素固有モードを基盤としたモード分離法:自励振動に対する動吸振器の動作原理の解明では,付加される減衰の系への影響を高精度に評価することが重要である.そこで,減衰自由振動系から求められる複素固有モードに基づくモード分離法を開発し,従来の不減衰自由振動系の実固有モードを用いた手法よりも高精度なモード毎の安定性評価が可能となった. 2.時間遅れ系:(1) 1のモード分離法を利用して,モード毎の近似特性方程式を導出した.この結果,従来の実固有モードを用いる方法と比較して高精度な安定性解析が可能となった. (2)抄紙機のスーパーカレンダーロールのような接触回転系を対象に,時間遅れの原因となるゴムロールの直径比の変更による安定性向上の実験的検証を行った.その結果,直径比の変更による安定性改善の傾向を確認できた. 3.係数励振系:(1) 1の手法を利用することで,(i)支点が上下する剛体振り子および(ii)軸力が変動する梁の横振動を対象とした系の安定性評価の指標となる近似解の精度が向上した.また,その近似解を用いて,動吸振器によって系が安定化するメカニズムをエネルギー的観点から詳細に検討した.(2) (ii)のモデルではモード間の連成に基づく結合共振が発生する.この結合共振における特性指数の近似解の導出法を確立した.この結果,結合共振領域における動吸振器の動作原理の検討が可能となった. 以上の成果により,動吸振器の動作原理の解明および最適設計法の確立が期待できるようになった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自励振動に対する動吸振器の動作原理の理論的解明に関しては,「9.研究実績の概要」で述べたとおり,複素固有モードを基盤としたモード分離法を新たに開発した.従来の不減衰自由振動系の実固有モードを用いたモード分離法では,系に作用する減衰が大きい場合には精度の高い安定性評価ができない問題点があり,減衰が大きな役割を果たす自励振動に対する動吸振器の動作原理を解明するうえで解決すべき大きな課題であった.複素モードに基づくモード分離法の開発により,モード毎の安定性評価の精度が飛躍的に向上し,研究の進行に大きく貢献した.ただし,発生原因により分類される4つのタイプの自励振動のうち,当初の予定では時間遅れ系,係数励振系および非対称行列系の3つのタイプを対象とする予定であったが, 新たに開発したモード分離法の開発の検証に多くの時間を費やしたため,時間遅れ系および係数励振系と比較すると非対称行列系の進捗状況はやや遅れ気味である.ただし,時間遅れ系および係数励振系に関しては著しい成果が得られているため,これらの成果を利用することで非対称行列系に関しては最終年度内の終了が見込められる.さらに,当初予定していなかった残りの1つのタイプである負の減衰系に対しても本手法が適用可能であることが明らかになりつつあり,今後予定以上の研究成果が期待できる. これらの理論の実験的検証に関しては,既存の実験装置を利用した時間遅れ系に関しては順調に進捗しているが,他のタイプの自励振動の実験的検証は,上述の新たなモード分離法の検証に適した実験装置を製作する必要があるために若干遅れている.ただし,これらのモデルの機構は比較的単純であり同様な装置の製作経験もあるため最終年度内で検証可能であると考えられる. 以上の総合的な観点から「おおむね順調に進展している」とした.
|
Strategy for Future Research Activity |
自励振動に対する動吸振器の動作原理の理論的解明に関しては,引き続き研究代表者および4名の研究分担者からなる計5名の研究体制で行っていく.研究分担者のうち2名は研究期間途中で他大学へ異動しているが,それぞれが分担している研究班毎に緊密な協力・連携のもとで研究を進めることが可能である.また,月1回の頻度で当大学にて打ち合わせを行う予定であり,研究遂行に大きな影響はないと考えられる.さらに,昨年度同様に博士課程2年の学生を研究協力者として加えることで滞りのない研究遂行を図る.今後は,研究代表者の総括の下,各研究班の成果を共有し効率的に研究をすすめ,自励振動の発生原因の4つのタイプを統括的にまとめた防止対策の最適設計法の確立を目指す. 上記理論の実験的検証は,時間遅れ系に関しては既存の実験装置を使用して十分な成果が得られているが,他のタイプの自励振動の実験的検証は最終年度にとりまとめて行う予定である.なお,当研究室には,専属の技術職員が在籍しており専用の工作室も完備されているため,実験装置はほとんど自作可能である.よって,研究の進捗状況にあわせた適切なスケジュール調整が容易であり,最終年度内に十分実現可能であると考えられる.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「11.現在までの達成度」でも述べたとおり,研究はおおむね順調に進展しているが,理論に関して新たな展開があったため,これに合わせた実験装置を製作するために一部仕様決定に遅れが生じた.このため,部材および装置の手配を次年度に持ち越すこととなった. 実験装置の仕様はほぼ決定しており,納入に時間を要する物品を購入する予定はないため,当初の予定を大幅に変更して使用することはない.なお,本計画変更に伴う研究遂行の遅延はない.
|
Research Products
(18 results)