2013 Fiscal Year Annual Research Report
異常横磁界効果を利用した高温超伝導テープ線の遮蔽電流磁化の消去法の検討
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24360110
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
柁川 一弘 九州大学, 超伝導システム科学研究センター, 准教授 (10294894)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高温超伝導体 / テープ線材 / 遮蔽電流 / 磁化 / 異常横磁界効果 |
Research Abstract |
実規模サイズのNMR(核磁気共鳴)マグネットの一部を構成する巻線に用いたテープ線材に誘起された遮蔽電流による磁化の効果的な除去が可能かどうかを検証するために、過去に製作された500 MHz NMR用LTS(低温超伝導)インサートを置き換えるためのHTS(高温超伝導)インサートを設計した。HTSインサート用の線材としてRE(希土類)系HTS薄膜導体を想定し、励磁後に巻線内に誘起される遮蔽電流を除去するための補償コイルも設計した。補償コイルは、銅製の平角導体を2層巻いたものをHTSインサートの内外に同軸配置する構成とした。RE系薄膜導体における臨界電流の磁界強度・印加角度依存性に基づいて、HTSインサート内の臨界電流分布を評価し、遮蔽電流の除去に必要な交流磁界振幅を発生する銅補償コイルの諸元を決定した。また、巻線の一部が熱暴走に至った場合の一定時間内の最大許容温度の観点から、RE系薄膜導体に必要となる安定化銅の厚さも見積った。その結果、設計した銅補償コイルにより振幅0.1 Tの交流磁界を発生すると、液体ヘリウム中で約100 Wのジュール発熱が生じることがわかった。 次に、NMRマグネットにおいて貴重なボア空間を有効活用し、かつ液体ヘリウム中での発熱を抑制するために、RE系薄膜導体を巻線した補償コイルをHTSインサートの外側のみに配置する構成について検討した。HTS補償コイルが発生する交流磁界の均一性を可能な限り確保するために、1層巻きの外側に2層目を部分的に巻いたノッチ付き構造を採用した。大口径の超伝導マグネットを励減磁することにより予めHTSインサートに遮蔽電流を誘起し、コイル中心部における遮蔽電流磁界の時間変化を観測した。その結果、HTS補償コイルを用いてHTSインサートに交流磁界を印加することにより、遮蔽電流磁界が時間とともに指数関数的に減少することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実規模サイズのNMRマグネットにHTSテープ線材を使用した際に誘起される遮蔽電流磁化を提案手法により除去可能かどうかを検証した。その結果、銅補償コイルでは多少の発熱が予想されるが、十分許容できる値であることを明らかとした。また、HTS補償コイルを用いた新構成の補償コイルも提案し、遮蔽電流磁化を低減可能なことを実験的に明らかとした。
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Strategy for Future Research Activity |
実規模サイズのNMRマグネットにおいてもHTSテープ線材に誘起された遮蔽電流による磁化を提案手法により除去可能なことを明らかにしたので、当初の計画に従って着実に研究を推進していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画に従った着実な研究の進展により、多少節約した助成金の使用状況を達成することができた。 次年度についても、当初の計画に従って研究を進展することにより、研究費に見合った研究成果を着実に挙げていく予定である。
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