2013 Fiscal Year Annual Research Report
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24360114
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
本久 順一 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (60212263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹倉 弘理 北海道大学, 創成研究機構, 特任助教 (90374595)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ナノワイヤ / 発光ダイオード / 光共振器 / 光取り出し効率 |
Research Abstract |
平成25年度はナノワイヤによる発光素子の実現・評価のため、以下の3点を中心に研究を行った。(1)InPナノワイヤアレイを用いて作製した発光ダイオード(LED)の放射パターンについて、平成24年度に得られた実験結果をさらに詳細に解析し、理論的検討を進めた。特に、放射角度の変化とともに発光波長ピークがシフトする現象について、ナノワイヤ導波路のカットオフ波長と関連している可能性があることを示した。またナノワイヤの発光強度が局所状態密度や共振器の共振モードと密接に関係していることも計算によって明らかにした。そして、ナノワイヤが周期的に配列していることに伴うフォトニックバンドの影響について、平面波展開をもちいた散乱行列にもとづき検討し、その結果、現在の実験に用いたパラメータのナノワイヤアレイでは、サイズ不均一性の影響もありフォトニックバンドの効果は限定的であり、昨年度に行った有限時間差分(FDTD)法と近接場-遠方場変換を用いた単一のナノワイヤの放射パターンの解析結果を適用しても定性的には大きな影響のないことがことが明らかとなった。(2)ナノワイヤによる光共振器の設計手法を確立した。長さ有限のナノワイヤの共振モードは、無限の長さのナノワイヤ導波路の伝搬定数βを用いれば通常のファブリペロ共振器と同様の関係式により説明できることを明らかにした。これにより、6角断面寸法を持つナノワイヤは、その対称性も考慮すれば断面寸法700nmのとき、波長850nm付近に高いQ値を持つモードが存在することを示した。一方、基板から垂直に立っているナノワイヤの場合、基板とナノワイヤ端面での反射率が十分でないため、Q値としてはまだ大きな値が得られておらず、今後さらに検討すべき課題であることも明らかとなった。(3) ナノワイヤを横方向成長させることにより発光強度が増大し、この増大は成長前後のナノワイヤの体積比よりもはるかに大きいことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単一のナノワイヤ形成、ならびにナノワイヤ中の量子ドットの光学特性の評価については、試料作製の再現性に問題が発生し、順調でない面もある。しかし、ナノワイヤLEDの発光特性・放射パターン評価については当初の予想を越えて興味深い現象があることが明らかとなり、研究の広がりという点も含めて予想以上の成果を上げている。さらに発光効率改善、さらにはレーザ応用のために開始したナノワイヤ光共振器に関し、共振モードと発光強度増強との関連が明確化でき、また共振モードの起因に関する理解が深まったことにより、共振器の設計手法を確立できた。以上を総合的に考慮した上で、おおむね順調と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、単一のナノワイヤやナノワイヤ量子ドットの形成に関する再現性の問題を解決する。このうち単一のInPナノワイヤ形成については、均一な選択成長の条件が高密度のナノワイヤアレイとは大きく異ることを掴んでいるので、その理由の解明とともに、結晶の成長条件の再検討を行う。その上で単一のナノワイヤによるpn接合素子の作製を行い、その発光特性や放射パターンを評価する。加えて、ナノワイヤの共振モードを利用した発光強度の増強について、発光強度のナノワイヤ横方向サイズ依存性を評価することによって、実験的に明らかにする。同時に、基板から垂直に立った状態のナノワイヤ共振器について、計算によりQ値の高いモードが存在するかどうかの探索や、金属埋めこみなどによって端面反射率を向上させることができるかどうか実験的に検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ナノワイヤ形成の確認に必要な電子顕微鏡観察による依頼分析が必要となったが、実験の再現性の問題もあり、適切なナノワイヤの試料を得ることができなかったため、次年度に持ち越すこととした。 形成したナノワイヤの電子顕微観察の分析依頼を行うために使用する予定である。
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