2013 Fiscal Year Annual Research Report
巨大電界効果を利用した可変面積電極の提案と可変容量キャパシタへの展開
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24360119
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
徳光 永輔 北陸先端科学技術大学院大学, グリーンデバイス研究センター, 教授 (10197882)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 可変容量キャパシタ / 薄膜トランジスタ / 強誘電体 / 酸化物半導体 |
Research Abstract |
本研究では、巨大な電界効果を誘起できる強誘電体または高誘電率材料と薄膜トランジスタ構造を用いて、面積を可変できる酸化物伝導体または酸化物半導体からなる新たな可変面積電極構造を提案し、可変容量キャパシタを実現を目指している。 平成24年度は当初の計画通り原理検証と基礎的な薄膜形成実験、さらに予定を前倒ししてデバイス試作まで進め、500%以上の容量変化を得た。さらに、ソース・ドレイン電極をトップコンタクト型で形成すると素子のオン状態からオフ状態へのスイッチング時間が長くなるという問題点を指摘した。そこで平成25年度はこれらの知見に基づき、トップコンタクト型に代わってボトムコンタクト構造の薄膜トランジスタ構造を作製した。まず容量ー電圧特性から原理通りの容量変化を観測し、さらにスイッチング特性を評価したところ、トップコンタクト型で問題となるオン状態からオフ状態へのスイッチング時間が改善されることを明らかにした。 さらに25年度は素子のQ値を向上させるために、チャネルの微細化の検討を進めた。本研究では大きなチャネル幅/チャネル長(W/L)比を得るためにナノインプリントリソグラフィー(NIL)法を用いることを提案している。25年度はチャネル長を120nmまで微細化した強誘電体ゲート薄膜トランジスタを作製し、その動作確認に成功した。さらに進んで、25年度は導電性酸化物ITOの溶液プロセスによる形成と、ゲルを直接インプリントして微細パターンを形成する実験も行い500nm程度の微細パターンの形成を確認した。 以上の実験と平行して、大きなQ値を得るための新チャネル材料の検討も行った。アモルファスカーボンにおいては予想よりも抵抗が高く、良好な結果が得られなかったが、グラフェンを用いたトランジスタでは良好な電気的特性が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は当初の計画通り原理検証と基礎的な薄膜形成実験を行い、デバイス試作まで進めたところ、新たなスイッチング時間の問題が明らかとなった。平成25年度は、ボトムコンタクト型のトランジスタを作製して特性を評価し、大きな電荷量を制御する等価的な大きな比誘電率を持つ強誘電体ゲート構造デバイスにおいても、ボトムコンタクト型のトランジスタ構造を採用することで、スイッチング時間の問題は回避できる見通しが得られた。 次に素子の特性(Q値)を改善するためにナノインプリントリソグラフィー(NIL)法を用いて素子の微細化の検討をめ、チャネル長を120nmまで微細化した強誘電体ゲート薄膜トランジスタの動作確認に成功した。電子線露光を用いずに100nmクラスのデバイスが作製できた意義は大きいと考えられる。さらに進んで、25年度は導電性酸化物ITOの溶液プロセスによる形成と、ゲルを直接インプリントして微細パターンを形成する全く新しい手法により、500nm程度の微細パターンの形成を確認した。また、以上の実験と平行して、新チャネル材料の検討も行った。 以上のように、25年度は24年度に明らかとなった新たな問題点をデバイス構造を工夫することで解決できることを示し、さらに素子の微細化を検討し、120nmチャネルのデバイスの動作確認にも成功している。これは当初目的としていた値より小さい。またゲルの直接インプリントによる微細パターン形成も実施できた。新規材料の探索では予想したほどの結果が得られなかったが、デバイス構造、プロセスにおいて研究の新たな展開と進展が見られた。従って全体的にみれば当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、24年度に明らかとなったスイッチング時間の問題の解決法を示し、さらに素子の微細化の検討を行い、120nmという微細チャネルデバイスの動作を確認した。本研究では、ナノインプリント法を用いた微細化を実施しているが、微細パターンの基本的な形成条件は明らかになりつつある。従って今後はナノインプリント法を用いて大きなチャネル幅/チャネル長(W/L)比を持つ素子の試作へと研究を進める。最初に大きなW/L比を持つデバイスパターンを設計し、ナノインプリント用ののモールドを発注する。次にナノインプリントリソグラフィー法、または新手法のゲル膜を直接インプリントする手法により、微細チャネルでかつ大きなW/L比をもつデバイスを試作し、特性を評価する。これにより容量可変率と高Q値をもつ素子が実現できると期待される。これと平行して新材料の探索も引き続き実施する。ゲート絶縁膜としては、10nm以下の薄膜でも強誘電性が発見され微細化チャネル素子には最適なHfO2系酸化物のの溶液プロセスによる形成を予定している。さらに新チャネル材料としてグラフェン等のカーボン系材料の他、MoS2等の新材料にも挑戦する。このために簡易型の薄膜堆積装置を導入予定である。 以上により、大きな可変容量特性と高Q値をもつ可変容量キャパシタを実現する。研究が順調に進めば、さらに高周波特性への評価まで進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度研究開始当初は、可変キャパシタの特性改善のための低抵抗チャネル形成用として、カーボン蒸着装置の導入を予定していたが、導入前の事前チェックのためのデモ実験の結果、膜の抵抗値が予想よりも大幅に高く、本研究の目的に見合わないと判断し、購入を見送ったため。 平成25度までにナノインプリント法を用いた素子の微細化に一定の目処がついたため、平成26年度は微細チャネル形成のためのナノインプリント用のモールドの発注に使用する予定である。また、平成26年度も引き続き新材料の探索を実施する予定であるが、カーボンに特定せず、様々な材料を堆積できる簡易型の薄膜堆積装置の導入を予定している。
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Research Products
(8 results)