2013 Fiscal Year Annual Research Report
多値ReRAM搭載のナノドットアレイによる多入力多出力フレキシブルデバイスの研究
Project/Area Number |
24360128
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高橋 庸夫 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (90374610)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有田 正志 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (20222755)
小野 行徳 富山大学, 大学院理工学研究部, 教授 (80374073)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 少数電子素子 / 抵抗変化素子 / 電子デバイス・機器 / 先端機能デバイス / 省エネルギーデバイス / 揺らぎ許容デバイス / フレキシブルデバイス / 量子情報処理デバイス |
Research Abstract |
ナノドットアレイを用いた単電子パルスニューロン回路などのフレキシブルで冗長なシステム構築に向けて、ドット間の連結の調整に関して検討した。単純なAND、XORなどの論理関数実現には、ドット配置とゲートの配置が重要であることを示したが、更なる省電力化・高機能化に向けて、アレイサイズを拡大する必要が有り、ドットと入力ゲート間の容量結合だけではなく、ドット間の容量結合をも積極的に使う方式を考えた。ナノドットアレイ内でドット間の連結を直接観測するのは困難であるため、2個、あるいは3個のナノドットが直列接続したデバイスにゲート電極を多数(最大5個)取り付けた素子を実現し、ドット内に包含する電子数(数十個の領域)を増加させることでドット間の連結の度合いを調節できることを明らかにした。 抵抗変化メモリ(ReRAM)素子の検討では、各種の金属酸化物材料を検討した中で、WOx、MoOx、を選択してメモリ動作特性について検討した。加えて、ReRAMの将来の実用化に向けての最大の障壁となっている動作原理解明のため、透過型電子顕微鏡内でのMoOx を用いたReRAM動作とその場観察を実現し、世界で始めて繰り返しの抵抗スイッチ特性を透過型電子顕微鏡内で確認した。同時に、抵抗スイッチに対応した金属フィラメントの生成と消滅を世界で始めて連続的に確認した。 単電子トランジスタでは、テラヘルツ波領域でも整流可能であるという、新たな結果から、新技術として期待されるテラヘルツ波領域の受信機として動作する可能性が高いことがわかった。高周波動作に関する知見を得ることは本研究の目的の一部であるが、テラヘルツ波の受信は本研究の本来の目的ではない。しかし派生的に得られた知見とは言え、今後の大容量通信技術や遠赤外線センサーなどの受信機(受光器)として、有用となる可能性を秘めているので、その実現性についても検討を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ナノドットアレイデバイスの高機能化に向けての、ドット間連結の調整手法として、ドット内の電子数を用いることが可能であることを示し、今後の高機能ナノドットアレイデバイス実現に向けて大きく前進した。 最大の成果は、透過型電子顕微鏡内で、MoOxを用いたReRAMの動作とその場観察を実現し、世界で始めて繰り返しの抵抗スイッチ特性を透過型電子顕微鏡内で確認した。加えて、抵抗スイッチに対応した金属フィラメントの生成と消滅を世界で始めて連続的に確認したことである。これは、ReRAMの動作機構を解明し、実際に使えることを実証するためには、動作原理の確認が不可欠であることから、重要な進展であったと考えられる。ReRAMデバイスが製品化された後の故障原因の推定を行う際、また長期信頼性を確保し製品の信頼性を高める上での加速寿命試験を行う際に、物理的な動作原理を確認しておくことが必須である。加えて、ここで実現した、透過型電子顕微鏡内でのReRAM動作は、故障原因の確定にも用いることが可能であり、今後の大きな進展が期待できる。実際、これまで電気的な特性から単純に予想され提唱されていたフィラメントモデルとは異なった動作を示していることが判明し、今後のデバイスの実用化に向けて、これまでには無い新たな重要な知見が得られた。 ナノドットを用いたデバイスの高速動作性の検討では、テラヘルツ波領域でも、整流特性が周波数の上限無く生じることを利用できることを示した。これは、本研究の目的からは外れるが、新たなテラヘルツ波領域での応用に期待ができる結果であり、これに関しては共同研究により進める準備を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
高機能化ナノドットアレイについては、25年度に確認したドット間連結をナノドットアレイに適用し、これを積極的に用いて論理機能が実現できるかどうかを追及する。また、今回は、連結の度合いを電子数によって変化させているが、これを電子数一定のまま可能にする方策について検討し、量子情報処理応用も可能な素子開拓をも目指す。また、下記のReRAMデバイスの検討と合わせて、スパイクニューロ動作の構築に向けて、過渡的な応答の評価を進める。 ReRAMに関しては、MoOxをReRAM材料として用い、透過型電子顕微鏡内での動作を確認できたので、これを一層推進し、他の材料でも同様に可能かどうかを確認する検討を行うとともに、高機能化につなげて行く。加えて、ReRAMでは過電流によるデバイス破壊や、書き込みと消去を繰り返した際に、特性劣化が生じることがある。これらのメカニズムを透過型電子顕微鏡内で確認しながら評価し、故障を生じさせる原因追求とこれを防御する対策について明らかにする。加えて、MoOxやWOxを用いたReRAMの安定動作化を図り、抵抗が可変なアナログメモリとしての特性を確保し、抵抗制御法を確立するとともに、ナノドットアレイと連携することでニューラルネットワーク素子としての動作を目指す。 本研究遂行中に見出した、単電子デバイスのテラヘルツ波領域での応用に関しては、共同研究の体制を構築したので、これにより推進する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
継続的に、デバイス試作を行い、その特性評価を行って、研究成果を発表していくことを目的とした研究であるため、今年度も経費が必要である。下記の使用計画にあるように、最終的なデバイス高性能化に向けて、装置改良が必要なことが見えていたので、多少の経費を残してある。 透過型電子顕微鏡内での動作の確認が、デバイスの信頼性の向上と高機能化に重要であることがわかったので、透過型電子顕微鏡内での評価系の整備(修理も含めて)に資金を投入していくことを予定している。加えて、スパイクニューロン回路構築に向けて、ReRAMデバイスと単電子デバイスの評価系のさらなる高度化のための過渡応答の評価装置として、デジタルロックインアンプを購入する予定である。今後も引き続き、研究成果発表やデバイス試作の継続に経費を用いていく。
|