2013 Fiscal Year Annual Research Report
地震動集合の有する情報量を用いて不確実な状況での信頼性を考慮した設計入力波合成法
Project/Area Number |
24360177
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本田 利器 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (60301248)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 設計用入力波形 / 非線形挙動 / 情報エントロピー / 地震動集合 / 不確実性 |
Research Abstract |
平成25年度は,初年度で検討した地震動集合の有する情報量の評価方法の適用法についての検討を継続すると共に,集合を代表する波形の合成手法についての検討を実施した. 構造物の非線形挙動に伴う損傷としては,強度劣化や残留変位,損傷の局所化等の様々なものが考えられる.これらの非線形挙動に対応する特徴指標を設けて考慮することは,手順が非常に煩雑化することもあり,実用的ではない.また,実際の耐震設計において,考慮すべき非線形挙動をすべて網羅的に列挙することは容易ではない. 複数の入力地震動を性能照査に用いた際に,波形の数に応じてどの程度の耐震強度が構造物に保証されるかを確率的に評価する手法について検討を行った.提案手法では,有限個の特徴指標に基づいて評価した入力地震動の集合が有する情報エントロピー値と,構造物の耐震強度の関係に着目した.入力地震動の数が増えても情報エントロピーが低い値にとどまる確率,すなわち,入力地震動の集合が有する多様性が低いままである確率が0へと収束する際の収束速度をSanov の定理によって評価し,この評価式を構造物に保証される耐震強度の確率的な評価に利用することを提案した.数値シミュレーションからは,入力地震動の集合が有する多様性や構造物に保証される耐震強度が小さな値をとる確率は,入力地震動の数と共に指数的に減少していることが確認され,提案手法による評価式はこの収束速度を近似することができた. 一方,複数の地震波を用いて代表を合成する手法の性能については,計算量の急激な増加や信頼性の高い指標の抽出などにおいて検討すべき課題が明確になった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
情報エントロピーやKLダイバージェンスの算定に用いる非線形応答値の選定,及び,それらに基づく評価結果について,理論的に再検討を要する問題が生じたため.この問題についてはほぼ解決したため,次年度以降の検討の継続に影響はないと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,Sanovの定理を利用して,性能照査を経た構造系の安全性が一定の水準以下になる確率を評価する手法についての検討を継続する. 波形合成手法については,地震動を代表する波を複数化する手法の検討を継続する.そのため,KLダイバージェンスを用いた波形のクラスタリングや,分類したクラスター毎の代表波の合成といった方法を採り入れた手法の検討を実施する. また,情報エントロピーに基づく地震動集合の設定と,その集合を代表する波形の合成手法を連携させて,本研究の開発目標である地震動合成手法の枠組みを構築する.実際の地震環境を対象として,強震動シミュレーションや極大地震動の考慮が,設計地震動に与える影響について定量的に検討し,提案手法のロバスト性等を検証する.また,開発した手法の実際的な運用手法について検討するため,設計で要求される性能に合わせた適用手法について検討する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究体制の整備が十分でなかったことと,体調不良で海外シンポジウムに参加できなかったため 共同研究者を一人増やし,体制を整えて,研究を進捗させる予定.
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Research Products
(4 results)