2013 Fiscal Year Annual Research Report
融雪剤の影響を受けて劣化した道路橋RC床版の診断・治療技術の構築
Project/Area Number |
24360184
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岩城 一郎 日本大学, 工学部, 教授 (20282113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
子田 康弘 日本大学, 工学部, 准教授 (40328696)
上原子 晶久 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (70333713)
内藤 英樹 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50361142)
羽原 俊祐 岩手大学, 工学部, 教授 (10400178)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 凍結防止剤 / 道路橋RC床版 / 疲労 / ASR / 輪荷重走行試験 / 光ファイバセンサ / 3Dレーダ |
Research Abstract |
平成25年度は,研究実施計画に従い,以下の研究を行った. まず,融雪剤(凍結防止剤)散布下において劣化したRC床版の多くはアルカリシリカ反応(ASR)の影響を受けていることから,ASR反応性を有する骨材を用いた実物大RC床版供試体を作製し,ASR促進試験を施した後に輪荷重走行試験を実施するという,国内外でも例を見ない実験に着手した.その結果,ASRによる膨張が供試体内の鉄筋に拘束され,コンクリートにケミカルプレストレスが導入されることにより,むしろ耐疲労性が向上するという結果をもたらした.この現象は実際の道路橋RC床版で見られる現象とは異なるため,平成26年度は実現象を再現可能なように実験方法を見直し,研究を継続する予定である. また,小型輪荷重走行試験を用いた実験により,輪荷重の走行速度が大きくなると床版の耐疲労性が低下することが明らかとなり,今後の設計上への留意点として提案可能な結論を得ることができた. さらに,RC床版供試体の輪荷重走行試験時に光ファイバセンサを用いたモニタリングを実施したところ,センサから得られる橋軸方向と橋軸直角方向の平均ひずみの比(ひずみ振幅比)を指標とすることで床版の劣化度を評価できる可能性が示唆された. 現場においては,道路橋RC床版の診断技術として,新たに3Dレーダを搭載した車両による走行試験を実施し,実際の橋の舗装内や床版内の損傷状態を明確に可視化可能な技術であることを確認した.本診断技術は簡便かつ一度に良質なデータを大量に収集可能なため,平成26年度はデータの解析方法を含め,本技術の実用化に向けた研究へと発展させる予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り,凍結防止剤の影響を受けて劣化した道路橋RC床板の診断・治療技術の構築を目指し,精力的かつ複眼的に技術開発を行い,多くの技術に対し,その妥当性を確認するとともに実用化に向けた目途が立った点で,研究の目的がある程度達成できたと評価される.一方,ASR劣化した道路橋RC床版の耐疲労性評価については,国内外で例を見ない実験にチャレンジしたことで,予想以上に促進試験時のASRによるケミカルプレストレスの導入が影響し,耐疲労性が向上してしまったことが課題として挙げられる.この点は,実際の劣化状況を適切に再現できるようASR促進試験と輪荷重走行試験の方法を見直し,再度実験を行う予定である. 以上の実験結果を総合的に評価することができれば,最終年度である平成26年度には当初の目的である凍結防止剤の影響を受けて劣化した道路橋RC床板の診断・治療技術の構築が実現し,実際の現場にこれらの技術が実用化されるものと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は本研究課題の最終年度に当たるため,これまで煮えられた研究成果を取りまとめるとともに,本研究の目的を達成するため,これまでの課題を解決するための追加実験,現場計測,解析を実施する. まず,ASRにより劣化した道路橋RC床版の耐疲労性評価については,ASR促進試験と輪荷重走行試験方法を再考し,実態に合った劣化現象が再現できる試験方法を考案する予定である. また,現場においては3Dレーダによる実道路橋RC床版の劣化に関するデータを蓄積し,得られたデータに基づく数値解析技術を発展させ劣化度の定量化を図るとともに,本試験方法の実用化に向けた技術開発を行う予定である. さらに,本研究を通して,道路橋RC床版に対する優れた診断技術として実用化が期待される3Dレーダ法,光ファイバセンサによるモニタリング,強制振動法等を,実際に凍結防止剤の影響を受け著しく劣化した道路橋RC床版に適用し,これらのデータの相互評価を行うことにより,実用化に向けた最終判断を行う予定である. 以上の3年間にわたる研究成果を取りまとめ,総合的な考察を行うことにより,凍結防止剤散布下において劣化した道路橋RC床版の合理的かつ実効的な診断・治療技術を体系化し,提案する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は凍結防止剤散布下において劣化したRC床版の耐疲労性を評価するため,輪荷重走行試験用実物大RC床版供試体中に多くのひずみゲージを装着する予定であった.しかしながら,実験の目的と効率を考慮した結果,そこまでのひずみゲージを装着する必要はないと判断した.これにより,輪荷重走行下での鉄筋のひずみ挙動を測定するための箔型ひずみゲージ,およびコンクリートの収縮膨張挙動を測定するための埋込み型ひずみゲージの個数を精査した関係で,当初予定していたよりもゲージの使用数が減少したため,次年度使用額が生じる結果となった. 平成26年度は3年間の研究プロジェクトの最終年度に当たるため,凍結防止剤散布下において劣化したRC床版の耐疲労機構を明らかにしたいと考えている.そのためには,これまでのひずみゲージに加え,疲労機構を解明することを目的としたひずみゲージの装着が必要となり,平成25年度以上にゲージの使用数が増加することが想定される.このうち特にコンクリート用埋込み型ひずみゲージを大量に使用することが想定されるため,平成26年度に繰越された研究費で,埋め込み型ひずみゲージの購入に充当したいと考えている.
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