Research Abstract |
コンクリート構造物の安全性は,地震や風,あるいは交通荷重などの力学的な作用により生じる応答Dと,構造物が保有する耐力や変形性能Cの比較に基づき評価される,通常,DやCの評価には非常に大きな不確定性を伴う.例えば,将来発生する地震の大きさや頻度,既存の実験式などに基づき計算される各種耐力などに介在するモデル誤差である.これらの不確定性を適切に考慮してDとCは比較されるべきである.信頼性理論では,確率変数によりこれらの不確定性を表現し,D>Cとなる確率(損傷確率)を求めることになる.従来,この損傷確率の算定では,構造物が持つ耐力や変形性能Cは,構造物のライフタイム内で一定の値を取るものと仮定して計算されてきた.しかし,実際には,日本海沿岸部に架かるコンクリート橋梁で観察されているように,飛来塩分や凍結防止剤の影響により,Cの値は建設後の年数の増加とともに低下していく.つまり,腐食環境にあるコンクリート構造物の安全性評価では,Cの低下を考慮して,逐一,各時刻でDとCの比較が行われなければならない. 本研究では,地震と塩害(海洋)環境にあるプレストレスコンクリート(PC)ラーメン橋梁を対象として,ライフタイムにわたる損傷確率の経時変化の計算例を提示する.将来発生する地震の大きさと頻度は地震ハザード曲線により評価され,構造物の耐力や変形性能の低下に影響する塩害環境の厳しさは塩害環境ハザード曲線により定量的に表現される.この2つのハザードを受けるコンクリートラーメン橋梁に対して,建設後の時劾におけるD(t)と腐食の影響を考慮したC(t)を算定し,D(t)>C(t)となる損傷確率を計算する.解析対象とするコンクリートラーメン橋梁が置かれる塩害環境と地震ハザードの厳しさのそれぞれの組合わせを考慮することで,D(t)>C(t)となる損傷確率の大きさやその時間変化を考察した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析的な研究については,信頼性解析,耐震解析,あるいは構造同定解析など,複数の解析法をインテグレーションし,マルチハザードを受ける橋梁のライフサイクルにわたる安全性評価を可能にするフローを構築するなど,着実な成果が出ている.実験的な研究は,装置の改良や供試体の作成に時間を要し,平成24年度は想定した結果が得られていない.しかし,平成25年度より実験を開始できる状態が整えられたことから,研究計画全体としては概ね順調に進展していると自己評価する.
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