Research Abstract |
経済活動の空間的集積現象には,i)様々な空間スケールでの立地集積から成る「階層的な空間構造」が形成され,ii)規模の大きな都市ほど多種類の産業が集積する,という2つの規則性が頑健に成立している.本研究の第一の目的は,これらの規則性が創発するメカニズムを統一的に説明しうる理論を構築することである.より具体的には,"local"な市場圏を持つ産業と"global"な市場圏を持つ産業の空間的不完全競争が行われるマルチ・スケール空間経済モデルを開発する.このモデルでは,空間周波数の異なる集積力と分散力の相互作用によって,交通・通信技術/労働人口等の変化に応じた解の分岐が生じる.その分岐現象の理論解析により,マルチ・スケール空間全体を通じて現れる多様な空間集積パターンの生成特性を明らかにする.本研究の第二の目的は,上記理論モデルを基礎として,現実空間に適用可能なCGEモデルを開発することである.より具体的には,集積経済効果とマルチ・スケール空間を導入したCGEモデルとその数値解析法を構築し,現実的問題への適用計算を通じて,理論との整合性や実用性を検証する. H24年度の研究では,第一の目的に関しては,階層的空間構造を外生的に与えた場合の基本理論を構築した.より具体的には,NEGモデルを一般化したマルチ・スケール集積経済モデルを構築し,系統的な分岐解析によって,地域間・地域内の2種類の輸送費用パラメータと均衡集積パターンの安定性の関係を明らかにした.第二の目的に関しては,集積経済効果を導入した多地域CGEモデルの解析基盤を構築した.より具体的には,従来型の多地域CGEモデルにNEG理論と同様の集積経済効果と企業の立地選択条件を導入した上で.経済変数間の理論的整合性の保証されたモデルを定式化し,均衡解の数値解法,パラメータ推定法を確立した.
|