2012 Fiscal Year Annual Research Report
サプライチェーンに着目した東日本大震災の経済被害の推計
Project/Area Number |
24360210
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
稲村 肇 東北工業大学, 工学部, 教授 (50168415)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加河 茂美 九州大学, 経済学研究科, 准教授 (20353534)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 間接経済被害 / サプライチェーン / 地域間産業連関分析 |
Research Abstract |
当該年度の研究内容:本研究では、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震を取り上げ、その経済的被害を推計する。経済被害は直接的な震災被害のみならず、サプライチェーンの寸断による被害の拡大がある。今年度はとうほくちほうの経済被害を家計に及ぼす被害と企業における被害を区別して推計を行った。震災による家計の被害や生産活動の減退は電力消費量の減少から間接的に推計された。東北地方の経済被害に端を発し、全国に拡大した経済被害の波及は地域間産業連関分析によって推計された。日本全国の産業の生産基盤の被害とそれに伴う消費の減退は分離して推計された。分析の結果の概要を記す。電力需要量基準で行った家計消費減少による経済被害は約1兆6,875億円である。一方、産業被災による生産活動の低下を原因とする業務用電力需要の減少率を基準として経済被害を推計した。この被害は4兆9,758億円と推計され、家計被害と合わせると全国の経済被害は6.7兆円に達したことになる。これは日本の年間生産額1,440兆円の約0.5%に相当する。さらに、推計した経済被害額に付加価値率をかけることで、最終需要が誘発する付加価値被害額の推計を行った。家計被災による付加価値の被害額は全産業で約9,785億円、産業被災による付加価値の被害額は全産業で約2兆4,118億円と推計した。今回の推計により地域ごとの被害波及の特徴、被害の大きさを分析することができた。 当該研究の意義:内閣府を中心とした国の行政機関は建物や道路・港湾などの物理的被害額を計測し、16兆9,000億円と推計している。しかし、停電や交通施設被害による産業活動の停滞、更には東北の産業に部品などを頼る産業に及ぶ間接被害については未だに推計がなされていない。本研究はこうした間接経済被害の推計するものであり、大震災の被害の全貌を知るためには不可欠な研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定したアンケート調査は回収サンプル数が不十分で思うような成果は得られていないが、一方では地域間産業連関分析が順調に進み、当初予定以上の成果が上がっている。このため、研究はおおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度は東北地方の経済被害がもたらした需要の減退を原因とする経済被害の波及を推計している。(後方連関効果)今年度以降は東北地方の経済被害による供給不足に伴う経済被害の波及、すなわち前方連関効果の推計を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き一次アンケート調査のデータ収集をし、被害状況や輸送条件変化などのサンフル回収を行い、調査結果データを基盤に推計する。
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Research Products
(10 results)