2013 Fiscal Year Annual Research Report
河口域での底生甲殻類の餌生物摂食に伴う重金属の生体移行性に与える溶存有機物の影響
Project/Area Number |
24360213
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中島 典之 東京大学, 工学系研究科, 准教授 (30292890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
春日 郁朗 東京大学, 工学系研究科, 講師 (20431794)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 重金属 / 水環境 / 生態毒性 / 錯形成 / 底生生物 |
Research Abstract |
本申請研究の目的は、都市周辺の水域における重金属類の水生生物への毒性影響を想定して、溶存有機物との錯形成や複数の生物を介した移行特性、底質を含めた挙動について知見を得ることである。本年度の研究により得られた結果は以下のとおりである。 1.底層水環境中での汚染物質の移行と生物影響評価 藻類の細胞内への重金属類の移行と捕食生物への移行性画分の評価について、さらなるデータの蓄積を進めた。緑藻Chlorella vulgarisを銅・亜鉛・カドミウムで汚染してカイミジンコHeterocypris incongruensに投与する実験を実施し、前年度に行った別種の藻類の結果と合わせて総合的な評価を行った。これらの重金属に対し、水系曝露と同等の餌由来曝露の致死毒性影響が示された。これは固相由来の重金属に対する底生生物の用量反応関係という有用性の高い新規の基礎的データである。なお二種の緑藻類を用いたが、全体的にデータそのもののばらつきが大きく、種による差異は明確ではなかった。ニッケルを用いた同様の実験も実施したが、用いた濃度範囲では明確な毒性影響が認められなかった。また下水処理水由来溶存有機物を添加した系での同様の実験にも着手した。 2.錯形成能特性評価 キレート樹脂法を用い、下水処理水中溶存有機物の重金属錯形成能の特性評価を行った。特に水環境中での紫外線による構造変化に着目し、波長310nmの紫外光照射前後の錯形成能の変化を調べた。照射後に銅の錯形成能が低下し、カドミウムの錯形成能は向上した。フーリエ変換質量分析計(FT-MS)を用いた特性評価については、異なる固相抽出カラムを用いて溶存有機物を分画する検討に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究項目のうち、底層水環境中での汚染物質の移行と生物影響評価については計画通り進捗し、当該分野での代表的な国際誌への論文掲載も決定し、国内学会発表でも受賞するなど成果を社会に発信し、評価されている。錯形成能特性評価については、環境中での紫外線による変化の実験に新たに着手し、新規性の高い知見が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね計画通りに推進するが、上述したとおり、水環境中での紫外線による錯形成能の変化に関して新規性の高い知見が得られつつあることから、最終年度はその知見の体系化に注力する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、外国人研究員を一年間雇用する予定でいたが、11月より他機関に転出し、後任が決定しなかったため主として人件費分を繰り越すこととした。 残りの研究期間が一年であるため新しい研究員を雇用することよりは、分析の外部委託や器具購入による実験作業効率化などを優先し、最終年度の研究を遂行する。
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Research Products
(8 results)