2015 Fiscal Year Annual Research Report
激震域における直接基礎の水平抵抗・支持力と上部構造物の極限応答
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24360228
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田村 修次 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (40313837)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
時松 孝次 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (50134846)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 直接基礎 / 水平抵抗 / 極限支持力 / 極限応答 / 大地震 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、まず、格子状地盤改良した粘性土の地震時応答を、改良の有無、改良率、改良深さをパラメーターにして遠心場振動実験を行い検討し、以下の結果を得た。なお、入力波は最大加速度0.16g-0.18gの神戸波である。 1) 未改良の場合、粘性土地盤の非線形性は顕著であり、地表面加速度は入力波よりも小さくなった。改良率24%では、未改良地盤より地盤の非線形性は弱くなった。直交方向と加振方向の改良壁の応答は異なり、改良壁にクラックが生じた。2) 改良率33%で全層改良の場合、地盤の非線形は明らかに弱くなり、地表面加速度は入力波よりも大きくなった。加振方向および直交方向の改良壁と改良内地盤の応答は極めて近く、改良壁にクラックは生じなかった。改良率33%で粘性土上部のみ改良の場合、改良地盤下における粘性土の非線形性が顕著であり、改良内地盤の応答の非線形性は弱かった。なお、格子状地盤改良体の上に、直接基礎建物を設置した遠心載荷実験結果についても、論文を投稿済みである。 次に、地盤と構造物の動的相互作用が上部構造物応答に及ぼす影響を検討するため、地盤-基礎-上部構造物系の遠心場振動実験において地表面で観測された加速度を、基礎を振動台に固定したモデルおよび直接基礎の直下に地盤を1cm(実大スケールで50cm)作成した模擬地盤モデルの振動台に入力し、以下の結果を得た。 3) 基礎を振動台に固定したモデルの上部構造物の応答は、地盤ありのケースのそれの2倍程度になった。4)模擬地盤モデルの上部構造物の応答は、実地盤モデルのそれと同程度であった。ただし、模擬地盤モデルではスウェイ動が、実地盤モデルではロッキング動が卓越した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、遠心載荷実験を夏から秋に予定をしていたが、委託先の遠心載荷装置の稼働率が高く、2016年冬に実験を行った。その実験結果は、極めて興味深いものであった。一般的に、直接基礎建物では、根入れが深いと上部構造物の応答は減少すると考えられている。地盤-直接基礎-上部構造物系の遠心載荷実験を、基礎根入れの深いモデルおよび浅いモデルについて行ったところ、50gal加振程度では根入れが深いと上部構造物の応答は減少した。しかし、入力加速度が200gal程度より大きくなると、根入れが深いと上部構造物の応答は増加した。この実験では、基礎根入れ部主働・受働面の地震時土圧と壁面摩擦力、側面の摩擦力と土圧を計測しており、底面の摩擦力の評価を可能としている。これらの地盤と構造物の相互作用力を実際に計測した例は少なく、根入れによる上部構造物応答増加のメカニズムの解明が可能と考えられる。また、本実験モデルでは、根入れ深さが6mの地震時土圧の深度毎のデータが得られた。それによると土圧係数は上部で、土圧は中部で最も大きくなった。根入れの深い基礎で地震時土圧を計測した既往の研究は極めて少なく、地下外壁の耐震設計に有用なデータが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.最適な地盤改良による直接基礎建物の極限応答の制御 2016年4月に発生した熊本地震では、震度7、震度6強の強震が建物を襲った。その結果、前震で損傷した戸建て住宅が、本震で倒壊する事例が多く発生した。このことは、単発の大地震から人命を保護するという現在の耐震の考え方に限界があることを示唆している。この複数回の大地震から人命および財産を守る方法として、地盤を適切に地盤改良し、地盤と基礎間の減衰を増やすと共に、建物のロッキング動を卓越させる手法が考えられる。これまでの知見を生かし、複数回の大地震から直接基礎建物の極限応答を制御する手法を提案したい。 2.大型遠心載荷装置を用いた大地震時における非線形動的相互作用の定量的な評価 地盤-構造物系の遠心載荷実験と模擬地盤-構造物系および構造物を振動台に固定した遠心載荷実験を入力動や地盤条件を変えて行い、動的相互作用による上部構造物の応答の違いを定量的に評価する。遠心載荷実験では、転倒モーメント、基礎のロッキング角、基礎根入れ部に作用する地震時土圧や地盤と構造物の摩擦力を計測することで、非線形相互作用を詳細に検討し、ロッキングバネや地震時土圧・摩擦力の非線形性や減衰が上部構造物の応答に及ぼす影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
遠心実験を2015年夏から秋に実施する予定でしたが、委託先の遠心実験装置の稼働率が高く、2016年冬にずれこみました。既に実施した実験結果は興味深く、大地震における直接基礎建物の応答は、中小地震に対する従来の知見とは異なることが分かりました。その結果、実験結果を十分に吟味したうえで要因を絞り込み、追加の実験をしたほうが良いと判断をしました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年4月に発生した熊本地震では、震度7、震度6強の強震が続き、前震で損傷した戸建て住宅が、本震で倒壊する事例が多く発生しました。複数回の大地震から人命および財産を守る方法として、地盤を適切に地盤改良し、地盤と基礎間の減衰を増やすと共に、建物のロッキング動を卓越させる手法が考えられます。次年度使用となりましたが、これまでの知見を生かし、複数回の大地震から直接基礎建物の損傷を軽減する手法を提案したいと考えています。今年度は2ケースの実験を考えています。
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Remarks |
実験データのデータベースです。
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