2013 Fiscal Year Annual Research Report
建築環境の波動音響数値解析のためのマクロ的境界モデリング
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24360238
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
大鶴 徹 大分大学, 工学部, 教授 (30152193)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富来 礼次 大分大学, 工学部, 准教授 (20420648)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 建築環境工学 / 建築音響 / 波動音響数値解析 / モデリング / 吸音測定 / 有限要素法 / 写真測定 |
Research Abstract |
平成24年度の成果をもとに、10,000 m3以下の空間を対象とした検討にあたった。 まず吸音モデリングについて、材の吸音性状を表面インピーダンスで処理する手法を検討した。その結果、粒子速度ー音圧センサ(PUセンサ)の安定性に関し、周辺環境の相対湿度が影響すること、また、校正時と実測時の相対湿度差が5%m未満であれば、吸音率の分散が0.04以下と、十分小さくなることを見出した。また、PUセンサの校正に関し、球形スピーカを用いる手法の試行を行い、従来の管内法による手法との比較を行った。その結果、双方の手法に一長一短があり、次年度に引き続き詳細な検討を重ねることとした。 次に形状モデリングについて、我々が提案する評価指標lgの有効性について、窓を対象としたさらなる検討を実施し、部材の幅,高さによらず,解析周波数に対して矩形部材の奥行きD が,D < λH×0.1 の場合、矩形部材の奥行きをなくし,一つの平面としてモデリングしても,音響指標算定精度への影響は小さいことなどを見出した。 さらに、我々が開発した修正積分則を用いる高精度の8節点音響要素Mlin8について、音響指標評価に関する聴感実験を実施し、Spl27と同様に Mlin8においてlGによる解析精度の制御が可能であることを示した。あわせて、魚眼レンズを用いる形状測定手法について、基本的精度の検討を実施した。その結果、レンズの校正を行わない場合の精度は十分と言い難いことを確認し、この点を最終年度に解決し実用的なシステムを構築することとした。 以上の成果について、Inter-noise(オーストリア・インスブルック)、日本建築学会大会・九州支部研究発表会、日本音響学会研究発表会において、中間的成果公表を行うとともに、研究情報収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
吸音モデリングについては当初計画に沿い、球面音源システムの導入により2種の校正法の比較が可能となり、妥当性、精度、確度の各点で定量的データが蓄積されつつある。形状モデリングについては、限定された音場ではあるものの、提案評価指標lgの有効性が確認されている。 魚眼レンズを利用する計測手法について、現在までにレンズ校正の必要性が確認され、最終年度に完成を図る計画としている。また、新たな修正積分則に基づく8接点音響要素MLin8については、既往の27節点音響要素Spl27との用途に応じた使い分けが可能であることが確認され、最終年度に実施する大規模音場解析を含む種々の音場解析で、その原理的有効性とともに実用性を示すことができると予想している。
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Strategy for Future Research Activity |
吸音モデリングについて、球面音源による手法と管内法によるPUセンサの校正手法の詳細を比較し、高精度の測定システムの確立を目指す。また、測定が困難とされている反射性材の測定についても、室の拡散性や低周波音をランダムに発生する効率的音源の工夫を行う。さらに、アンサンブル平均を用いる吸音特性測定手法におけるPUセンサの個体差、並びに、測定点等の平均化手法を検討し、建築音響での応用に適した測定手法としてまとめ提案する。 形状モデリングについて、提案評価指標lgの有効性を、有限要素解析とインパルス応答実測、聴感との対応から詳細に明らかにする。また、形状や吸音性状の異なる音場を対象に開発音響要素Mlin8の有効性を確認し、Spl27との使い分けの指針を提案する。さらに、カメラを用いる形状測定に関し、既往の研究を参考としたレンズの実用的校正法を確認した上で、代表的音場(講義室、会議室等)の計測を行い精度を確認し、建築音響に適した測定システムとしてまとめ提案する。 以上の吸音モデリング、及び、形状モデリングに関する検討で得られた成果を総合し、周波数領域・容積・精度の面で世界的にも大規模と認められる有限要素シミュレーションを実施する。なお、その結果を可視化等、訴求力のある形式で示すことで、本研究の有効性を示していく。 なお得られた成果は、Internoise2014(Australia)、日本建築学会大会、日本建築学会九州支部研究報告会、日本音響学会研究発表会、KYJCA2014など、権威ある内外学会で公表し学術的議論を重ねるとともに周知を図る計画である。 また研究の最終年度として、研究成果全体をまとめ学術論文として公表に努めるとともに研究室ホームページ等で広く公開する計画である。
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