2013 Fiscal Year Annual Research Report
室内空気中の浮遊微粒子を媒体とした新たな汚染メカニズムの解明と健康リスク評価
Project/Area Number |
24360242
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鍵 直樹 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (20345383)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柳 宇 工学院大学, 建築学部, 教授 (50370945)
並木 則和 工学院大学, 工学部, 教授 (40262555)
東 賢一 近畿大学, 医学部, 講師 (80469246)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 室内空気質 / SVOC / エアロゾル / 吸着 / 浮遊微生物 |
Research Abstract |
本研究では,室内空気環境における汚染メカニズムの解明として,室内空気環境における浮遊微粒子の存在に着目し,浮遊微粒子にその他の汚染物質,例えば準揮発性有機化合物(SVOC)や微生物などが付着し,浮遊微粒子を媒介にして室内環境中で移流する現象を想定して,実験的にその可能性の検討を行い,その挙動を解明することを目的とする。更に浮遊微粒子や各汚染物質単体では健康影響がないものの,このような現象によって引き起こされる健康リスクの増大の可能性についても検討を行うことにより,複合的な室内空気汚染機構について新たな展開を示すものである。 本年度は,昨年度に引き続き,チャンバーを用いたSVOCの付着実験を行い,試験粒子の種類及び試験粒子の表面積に注目して,SVOC付着に関するパラメータについて検討を行った。様々な組成の異なる粉体について,表面積計による表面積の測定と共に,浮遊状態及び沈着状態におけるSVOC(今年度はDEHP)の付着試験を行った。結果として,粉体表面積に付着量は大きく影響を受けると共に,粒子の組成によっても吸着量が異なってくることを確認した。更にその吸着傾向は粒子組成により異なることが示唆されたため,今後詳細に検討する必要性を確認した。 また,粒子と浮遊微生物との付着傾向についても,微粒子と微生物とが付着することが可能かどうかについて,大型チャンバーを用いた予備実験を行い,それぞれの粒子の発生方法,計測方法などの検討を行った。今後は,浮遊微粒子濃度と微生物濃度の関係など,実測調査結果との関連性について検討することにより,その特性について検証する。 浮遊微粒子に付着した際のリスク評価については,既往の研究を参考に,単体の汚染物質の健康リスクに加え,浮遊微粒子に付着した際のリスク評価について検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては,実測より得られた知見を元に,小型及び大型チャンバーを用いて,粒子とSVOC及び微生物との共存実験から,その付着傾向を実験的に明らかにすることを主眼にした,実験的研究である。現在まで,その実験装置の組み立てや実験を着実に行っており,データの蓄積についても順調に得ることが出来ている。 また,微粒子と微生物との共存実験についても,今年度の予備試験により,その発生方法や計測手法などを検討することができたため,来年度の本実験に向けて,データの蓄積を行うことが可能となると考えられる。 更には,健康リスク評価についても,随時文献等を通じて,最新情報を入手しており,物理的な現象及び健康評価について,総合的に検討が行うことができている。よって,本研究は当初の目的通り,おおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度においては,今年度に引き続き,チャンバー実験と共に,数値解析を用いた検討を加えることとする。 微粒子に付着するSVOC及び浮遊微生物については,小型チャンバー及び大型チャンバーを用いて,更にデータの蓄積を行う。特にSVOCの付着については,現在までの付着モデルには,時間のファクターが含まれていないことから,付着する時間,即ち滞留時間,チャンバーの換気回数などをパラメータに検討を行うこととする。また,微生物については,本実験を行い,微生物の空間中での挙動について,検討を行う。 以上については,チャンバー内の挙動について,数値解析モデルを作成しながら,モデルの妥当性を検討すると共に,それぞれのパラメータの付着量に与える影響について明らかにすることが可能となるものと考えられる。更に通常の空間レベルにおける付着挙動について,CFD解析を用いて検討することにより,実測との整合性について議論を行う。 更に,以上の結果を基に,健康リスクへの適用可能性について検討し,浮遊微粒子,SVOC,浮遊粉じん及び建物の環境要因など,様々なパラメータとの因果関係についても,検討を行うことが可能となると考えられる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年においては,大型チャンバーにおける微生物に関する試験については,それぞれの粒子の発生方法及び計測手法の検討など予備実験を行ったまでに留めている。また,SVOCについても,その他のパラメータについて,数値シミュレーションを元に再度検討する必要があるため,試験を行っていないパラメータが存在する。これらの試験に関して,来年度も引き続き継続的に行って行くために,次年度への繰り越しを行った。 来年度については,数値解析手法を用いた検討を新たに加えると共に,この知見を元にしたSVOC及び微生物の粒子への付着試験を行うことを検討している。更には,粒子への接触時間をコントロールするための機構が実験的には必要となってくるため,これらへの投資も行う予定である。
|