Research Abstract |
本研究では,火災安全工学の知見を活用することで,三項道路指定に伴う付帯的防火規制の工学的な検証手法を整備することを目的としている.平成24年度は,以下の3課題について検討した. (1)隣棟間の延焼危険性を評価するための模型燃焼実験 (2)建物内部の火災拡大速度を評価するための模型燃焼実験 (3)建築基準法の要求防火性能の分析 課題(1)では,1/5縮尺の細街路模型を用いた燃焼実験を行うことで,細街路内の一画で火災が発生した場合の隣接家屋への延焼危険性を評価した.具体的には,火炎噴出形態,開口幅,前面道路幅,庇の有無,燃料種別を変数とする実験を実施した.このとき,対向する非火災建物の1階,2階および屋根面に入射する熱流束を測定することで,噴出火炎性状の定式化に必要な基礎情報を取得した. 課題(2)では,隣接する2区画からなる幅1800mm×奥行き900mm×高さ720mmの区画模型を利用した燃焼実験を行い,片側の区画で発生した火災が隣接する区画に延焼する速さについて調べた.具体的には,燃料種別,開口形状,開口の有無を変数とする実験を実施した.この時,火災区画から火火災区画への延焼時間に加え,区画内の温度分布,可燃物の重量減少,可燃物周辺への入射熱流束,区画間の差圧を測定することで,区画間火災拡大速度の支配的要因について考察を加えた. 課題(3)では,京都市内のある地区における建物外観調査を実施し,これを同地区周辺の防火地域指定の変遷と重ね合わせることで,地区内における小地域単位の既存不適格率を推定した.また,この結果を住宅土地統計調査のいくつかの指標と比較したところ,これらの指標を用いることで建物既存不適格率の推定が可能であることを確認した.次年度以降,京都市内の各地区における既存不適格率と地震火災リスクを比較することで,要求防火性能の所在を明らかにしていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
模型実験は,おおむね当初の計画通り進めることができたが,実験結果を用いたモデルの整備には至っていない.一方,要求性能の分析は,市街地の実態分析に取り組むなど,当初の計画以上に進展させることができた.
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