2013 Fiscal Year Annual Research Report
近世指図の作図技法・描法の展開に関する研究IV―建地割の作製目的と編年指標の検討―
Project/Area Number |
24360258
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
伊東 龍一 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (80193530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 久太郎 宮城学院女子大学, 学芸学部, 名誉教授 (50086104)
斎藤 英俊 京都女子大学, 家政学部, 教授 (30271589)
吉田 純一 福井工業大学, 工学部, 教授 (40108212)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 指図 / 建地割 / 描法 / 技法 / 江戸時代 |
Research Abstract |
円覚寺仏殿造営図(鎌倉国宝館保管)のうち、建地割はGLを墨壺で描く。貫や台輪、桁などの四角い断面には交差する対角線を引く(×印)、画面に垂直な方向の肘木には円弧状の線を引き下部が円弧状を成す肘木であることを明示する、画面に垂直な尾垂木はやや角度を振って側面を描いて明示する等の表現の工夫がある。料紙寸法や紙厚、紙質とも平面を描く指図と同一の料紙を用いる。多くのヘラ線が残され、中世の建地割の作図技法・描法を伝える貴重なデータが収集できたといえる。 自性寺所蔵建地割には、ヘラ線や針穴などの作図痕の多い図と作図痕のほとんどない図があり、後者は紙厚が0.08~0,09㎜と薄く、写しである可能性が強い。作図した図の中には、左右対称の場合、中央で二つ折りにして右側の絵様を左側にヘラ押しして写しとる方法を採った図が見出された。また、幅を押さえたヘラ線(凹線)がある垂木の下部、軸部の位置に垂木幅の凸のヘラ線が認められる図があり、支割を示す作図痕である可能性がある。軒丸瓦の中心にはわずかな凹みが見出される図が多く、貫通する針穴でない点が注目される。独自の技法が見られる成果であった。 大瀧神社絵図(建地割)は、正面および側面立面図である。料紙はともに557㎜×427㎜程度、紙質も同一である。現存する神社を造営する際の設計段階の図と考えられる。直線は墨差し、曲線は筆を用いる。作図痕が多く、屋根では垂木をヘラ線で描いた後に曲線の破風や屋根面を墨で描くが、作図痕の意味についてはなお検討を要する。画面に垂直な尾垂木や脇障子は描かないが、木鼻の獅子は正面でも描く。拝殿の横羽目板や桟唐戸には木目も表現する。正面図の方が汚れや痛みが多く、図の周囲には側面図にはない一定の間隔の針穴があり、造営費等を集める際に竣工予想図として衆目を集める場に展示されたことも想像され、図の作製目的の点でより詳細な検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度までに予定していた調査をほぼ着実に実施し、かつ予定していなかった調査をも実施することができたが、最終的な目的である編年指標の十分な検討にまでは、まだなお到達していないため。
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Strategy for Future Research Activity |
改めて調査を予定している江戸時代中期以降の建地割や江戸幕府作事方の江戸方が作製した建地割の調査を実施してデータを増やすとともに、調査結果の分析を急ぎ、研究分担者の分析結果を持ち寄ってのミーティングの機会を増やして編年指標の確立に努めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に調査を実施した都立中央図書館特別文庫室所蔵江戸城関係建地割が重要文化財で、閲覧に必要な事前登録にやや時間を要したため、メンバー全員が参加する本格的な調査にならなかった。 本年度は、昨年度不十分であった都立中央図書館特別文庫室所蔵江戸城関係建地割の調査を確実に実施する計画である。
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