Research Abstract |
スピントロニクスは,電子のスピンと電荷を同時に利用する技術であり,電荷のみを利用する半導体デバイスに対して,デバイスの飛躍的な高機能化を可能とすることから,ユビキタス社会の基盤技術となる.スピントロニクスデバイスの主な課題は,(1)高集積化に対応するために,スピン方向を膜面垂直方向とすること,(2)低消費電力駆動かつCMOS適合性向上のために,電圧駆動型に発展させることである.本研究では,スピントロニクスデバイスに適した金属強磁性/絶縁性酸化物垂直磁化膜を開発し,金属/酸化物界面の垂直磁気異方性の発現メカニズムを電子的起源に基づいて解明する. 平成24年度は,絶縁性酸化物としてα-Cr_2O_3を中心とした検討を行った.特に,α-Cr_2O_3(0001)薄膜を絶縁性酸化物,Co-Ni(111)薄膜を金属強磁性薄膜とした場合に,強磁性層のCo-rich領域で明確な垂直磁気異方性が発現することを明らかにした.また,α-Cr203の反強磁性特性を利用した高い界面磁気異方性が発現することを示し、放射光軟X線を用いてその微視的起源についての検討を行った.さらに,パルス磁場を用いた方法で界面磁気異方性の方向を等温可逆的に変化できること示した.この技術は,現在,本研究グループのみが有する独自技術である.その他,金属強磁性体としてCo(111)/Ni(111)積層膜を用いた場合の垂直磁気異方性と磁壁エネルギー,磁気トンネル接合に向けた酸化防止膜としてTa-N,Ti-Nの有用性についても検討を行った。これらの結果は,多数の学会報告,論文発表により公表し,平成24年7月,8月には新聞報道によっても情報発信した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では,金属/酸化物積層膜における垂直磁気異方性とその電界制御に関する研究を行っている.平成24年度には,垂直磁気異方性を示す新しい系として,Co/α-Cr_2O_3系を開発し,また,その界面磁気異方性の符号を,パルス磁場によって反転させることも世界で初めて成功した.平成25年度以降の研究の主眼は,電界効果を予定しているが,平成24年度中に電界印加型試料作製に向けた必要設備の整備を完了させた.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,ゲート電圧印加型Ha11素子の開発を進める.平成24年度の未使用予算は,電界印加型素子への微細加工段階で素子構造修正を行ったため,当初予定と異なるマスク作製が必要になったことが主な理由である.この点を踏まえて,超高真空製膜装置の高度化,微細加工設備の整備を中心に設備費,消耗品費,改造費を予定している.また,前年度の結果が高く評価されたこと受けて,国内外学術会議において,招待講演を含む研究発表旅費を使用する.
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