2013 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ炭素スピントロニクスのためのフラーレン-遷移金属複合系スピン注入源の研究
Project/Area Number |
24360266
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
境 誠司 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, グループリーダー (10354929)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 吉弘 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究員 (80455287)
圓谷 志郎 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究員 (40549664)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 分子スピントロニクス / フラーレン / 磁性金属 / トンネル磁気抵抗効果 / 界面 / スピン偏極 / スピンフィルター / XMCD |
Research Abstract |
・フラーレン(C60)-鉄(Fe)グラニュラー薄膜のトンネル磁気抵抗効果について、C60/Fe界面における伝導電子のスピン偏極率が低温ではFe結晶内より大きくなることを論文発表した(S. Sakai et al., Synthetic Metals 173. 22 (2013))。研究代表者らはこれまでに同様なスピン偏極率の増大がC60/Co界面においても生じることを明らかにしており(S. Sakai et al., Appl. Phys. Lett. 89, 113118 (2006), 91, 242104 (2007), Phys. Rev. B 83, 174422 (2011)他)、今回の成果は、このような界面のスピンフィルター性がC60/磁性金属界面に広く共通する性質であることを示すものと言える。 ・スピンフィルター性などフラーレン/磁性金属界面の物性の根源を明らかにするため、C60/Fe界面のスピン依存電子構造や磁気的状態を深さ分解X線磁気円二色性(XMCD)分光により探索した。その結果、C60/Fe界面にあるC60は、一部のC原子がFe原子と共有結合してπ-d混成による新たな電子状態が生成することや分子軌道のエネルギーに分布が生じることが分かった。界面のFe原子層についても、軌道モーメントの増大など結晶内部とは状態が異なることが分かった。現在、次年度中の論文発表を目指して理論面からの考察を進めている。なお、本研究で用いた深さ分解XMCD分光装置は、本科研費補助金の一部を用いて開発したものである。研究代表者らは本装置を用いることで、上記以外にもグラフェン/ニッケル界面のスピン物性の解明(Y. Matsumoto et al., J Mater. Chem. C 1, 5533 (2013))などの成果を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに最終目標であるC60/磁性金属界面を介したスピン注入の実現には至っていないが、スピン注入の効率に直に関与する界面スピン偏極率を明らかにするなど素子開発の基盤となる知見を蓄積できている。加えて、深さ分解XMCD分光による界面スピン物性の探索は世界的にもユニークな取り組みであり、今後、ナノ炭素・有機分子と磁性材料の界面スピン物性の研究の発展に広く貢献できると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
・C60-Niグラニュラー薄膜のトンネル磁気抵抗効果の評価と深さ分解XMCD分光によるC60/Co,Ni界面の分析を進め、C60/磁性金属界面のスピン物性の系統的理解を図る。 ・C60/磁性金属界面を含むスピンバルブ素子を作製し、スピン輸送層(C60薄膜等)へのスピン注入の実現を図る。界面を介したスピン注入効率やスピン輸送特性を評価し、室温での効率的動作に向けた素子設計の知見を得る。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
深さ分解XMCD分光装置の整備に用いる配管部品・消耗品(ガスケット等)や素子作製のための試薬、物性測定のための低温寒剤の使用量が予想より少なくて済んだため 素子の作製に用いるスパッタターゲットの購入等、実験環境の整備に用いる。
|