2014 Fiscal Year Annual Research Report
水溶液プロセスによる透明導電性ZnO膜の実現と透明電子回路への挑戦
Project/Area Number |
24360270
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松下 伸広 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 准教授 (90229469)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
我田 元 信州大学, 工学部, 助教 (40633722)
勝又 健一 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 講師 (70550242)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 酸化亜鉛 / 透明導電膜 / 水溶液プロセス / 紫外線照射 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)紫外線処理条件による低抵抗化:スピンスプレー法で作製した緻密な構造の酸化亜鉛膜中のクエン酸イオン等の有機物を分解し、CやHのドープによりキャリア濃度を増加させた。1.1μmの厚みを持つ酸化亜鉛膜は9.7x10~19 cm~-3の高いキャリア濃度、1.2 cm~2/V・sの移動度、そして2.4x10~-2 Ω・cmの低い抵抗率を示した。 2)水素処理及び紫外線処理による移動度の向上とさらなる低抵抗化:1)の膜はキャリア濃度自体はスパッタ法の膜と比べても遜色の無い高い値であるので、より低抵抗化するには移動度の向上が課題であった。最適化された紫外線照射条件と還元熱処理条件において、高キャリア密度1.5x10~20 cm~-3と高移動度11.2 cm~2/V・sが得られ、1.8x10~-3 Ω・cmと透明導電膜として十分に応用可能な膜の作製に成功した。移動度向上の理由は膜中の粒界表面に存在するO~2-イオンや有機物が水素処理によって脱離し、ポテンシャル障壁が減少したのが原因と考えられる。 3)透明プラスチック基板上の透明導電性酸化亜鉛膜:柔軟で透明なポリエーテルサルフォン(PES)シートを基板とした場合でも85%と高い透明性を持つ緻密なZnO膜が堆積可能であり、紫外線照射の最適化により、9.1x10~-3 Ω・cmと高い導電性が得られることを明らかにした。また屈曲試験では500回までの折曲であれば10~-2 Ω・cm以下の低抵抗率が維持されることも確認した。 4)マスクを用いた紫外線照射による透明回路の作製:堆積した酸化亜鉛膜の上に直線、矩形の窓を持つアルミ製マスクを配置して紫外線処理を行ったところ、照射領域のみが低抵抗となることが明らかになった。そこで回路網状の窓を持つマスクを用いた照射実験を行い、透明酸化亜鉛膜中に導電性回路の描画が可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)紫外線ランプを用いた処理による低抵抗化についてはほぼ最適な条件を見いだす事に成功している。2)水素処理及び紫外線処理による移動度の向上とさらなる低抵抗化では、水素処理条件と紫外線処理をそれぞれ最適化することにより、1.8x10~-3 Ω・cmとこれまで達成された値に比べて大幅に低い抵抗値の達成に成功し、当初の目標以上の成果が得られたと言える。3)透明プラスチック基板上の透明導電性酸化亜鉛膜についても、9.1x10~-3 Ω・cm(キャリア密度2.1x10~20 cm~-3, 移動度1.5 cm~2/V・s)と予定通りに高導電性を得ることに成功した上に、屈曲性試験による導電性変化の確認まで進んでおり、ほぼ予定通りの成果を得たが、4)マスクを用いた紫外線照射による透明回路の作製では、透明回路が形成が可能であることは示したものの、マスクレスでの紫外線照射による透明回路の形成までは到達できなかった。 以上をまとめると、最終目的であった透明回路の形成を除くと研究項目については、期待通り以上の成果を得ており、特に還元処理を行うことによる移動度の向上と結果としての酸化亜鉛膜の低抵抗化が図れたことについては予想以上に大きな成果を得たと言えるので、全体としては(2)おおむね順調に進展という判断を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
1)紫外線波長を変えることによるさらなる低抵抗化:中心波長λがそれぞれ350 nm(UV-A), 300 nm(UV-B), 250 nm(UV-C)と異なる紫外線ランプを用いた照射実験を行う。照射強度、照射時間等を変えながら、さらに低抵抗化できる条件を探索する。特にUV-A→UV-B→UV-Cと徐々に波長が短い紫外線を照射していくことで、さらなる低抵抗化に加えてワイドバンドギャップ化も期待される。
2)バンドパスフィルターを用いた紫外線照射による有機物分解条件の解明:これまでの研究で波長λ=350~400 nmの範囲の紫外線が膜中の有機物分解に有効であることが分かっているが、詳細な条件ならびにメカニズムの解明を進めるには、紫外線を照射をより狭い波長領域に限定した実験が必要である。そこで、中心波長λがそれぞれ355 nm, 365 nm, 375 nm (半値幅 10 nm) のバンドパスフィルターを用いた紫外線照射実験を行い、膜中のクエン酸ほかの有機物が分解される条件を明らかにするとともに、膜中の深さ方向に向かって有機物が分解されていくメカニズムの検証を行う。
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Causes of Carryover |
溶液作製した酸化亜鉛薄膜に紫外線照射をして導電性を得る研究の中で、波長300~380 nmの紫外線照射が膜中の有機物を効率的に分解し、高い導電性が得られることは確認できたが、さらに~20 nm毎に異なる波長の紫外光を用いた実験を行うことで、膜中有機物の分解に寄与する波長をより正確に把握することができる。この研究をまとめるにあたり極めて重要となるこの追加実験を行うには数ヶ月はかかると予想されるとともに、追加で導入するフィルターの購入費や実験担当の博士研究員の人件費確保が必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の追加実験の過程で必要となる波長が異なるフィルター類やその他の消耗品の購入に合計で38万円が必要で、この紫外線照射実験ならびに得られた結果の分析・解析を担当する博士研究員の人件費が35万円なので、計73万円となる。
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Research Products
(23 results)