2013 Fiscal Year Annual Research Report
階層構造制御型セラミック基生医材料の創製と生医機能の複合的発現
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24360274
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
早川 聡 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (20263618)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 結晶配向性 / アパタイト / ケイ酸塩ガラス / ロッド配列構造 / リン酸カルシウム / 結晶成長 / X線回折 / 配向指数 |
Research Abstract |
生理活性金属イオンをアパタイト結晶格子内に導入し,「非化学量論的組成」と「構造の乱れ」を誘発させた階層構造制御型ロッド配列構造を作製することを目的として,Na2O-CaO-SrO-SiO2系ガラスを作製し,リン酸塩水溶液中でガラス表面に形成するHApのロッド配列構造の結晶配向性と結晶格子内のCaサイトへのSr部分置換に及ぼすSrOの含有量 (0~10 mol%) の影響を調べた。ケイ酸塩ガラス中のSrO含有量が多いほど重量減少率およびHApへの転換率は減少し,リン酸塩水溶液のpHの増加は抑制された。ケイ酸塩ガラス中のSrO含有量が多いほどガラス表面に形成したHAp結晶の格子定数が増大したことから,CaサイトにSrが部分置換していると考えられる。また,Ca/Sr比から予想される化学量論組成のHApの格子定数と一致したことから,ガラス組成によってSr置換量を制御できることがわかった。c軸方向へのLotgering配向指数から,SrO含有量が多いほどc軸方向への結晶配向性が低下することがわかった。これらの情報に基づき,破骨細胞の活性を抑制するSrのアパタイト格子内への置換量とアパタイトの結晶配向性を同時に制御するには,ガラスのSrO含有量を5 mol%以下にする必要があることがわかった。 炭酸塩イオンを添加したリン酸水溶液中でガラス表面に形成したHAp結晶の格子定数は,aが減少し,cは増大したことから,炭酸イオンがリン酸イオンサイトに部分置換していることが示唆された。アパタイトの溶解性を調節する因子である炭酸イオンの導入は,結晶成長と結晶配向性を低下させるため,炭酸イオンの導入量についてはSr同様に限界があることがわかった。しかし,リン酸水溶液中への炭酸イオンの添加がアパタイトの結晶成長を抑制したことにより,表面非晶質層の割合が顕著になって溶解性が促進される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であるSrイオンあるいは炭酸イオンをアパタイト結晶格子内に導入し,「非化学量論的組成」と「構造の乱れ」を誘発させた階層構造制御型ロッド配列構造を作製した。 破骨細胞の活性を抑制するSrの格子内への導入が確かめられ,ガラス組成によって自由に制御可能で,転換率や結晶配向性についてもガラスのSrO含有量を5 mol%以下であれば,ガラスからHApへの転換率やアパタイトロッド状結晶の大きさ,結晶配向性が制御できることがわかった。一方,炭酸イオンの導入はHApの結晶成長を抑制し,表面非晶質層の割合を増大させるため溶解性の制御に有効である可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り, Srイオンあるいは炭酸イオンをアパタイト結晶格子内に導入することにより「非化学量論的組成」と「構造の乱れ」を誘発させた階層構造制御型ロッド配列構造について,in vitro溶解性試験を実施して,溶解挙動に及ぼす各種材料学的因子(イオン置換量,結晶サイズ,比表面積,結晶形態)の影響を追究する。
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