2014 Fiscal Year Annual Research Report
階層構造制御型セラミック基生医材料の創製と生医機能の複合的発現
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24360274
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
早川 聡 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (20263618)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 結晶配向性 / アパタイト / ケイ酸塩ガラス / ロッド配列構造 / リン酸カルシウム / 結晶成長 / X線回折 / 配向指数 |
Outline of Annual Research Achievements |
固相反応法により作製したリン酸三カルシウム (α-TCP)およびSr含有α-TCP粉末0.5 gを超純水もしくは1.0 M Na2CO3 水溶液25 mL中,90℃で72時間静置し,その後,得られた沈殿物を超純水で洗浄してろ過し,105℃で3時間乾燥した。超純水を用いて合成した試料をHAp, 0.1SrHAp, 0.2SrHAp, 0.3SrHApとし,Na2CO3水溶液を用いて合成した試料をCAp, 0.1SrCAp, 0.2SrCAp, 0.3SrCApとした。 ICPによる元素組成分析の結果より,作製したHAp系試料はCa/P比の低いCa欠損型であることが分かった。XRDパターンより,HAp系試料ではHAp (PDF#09-0432) の単相,CAp系試料ではHApとCAp の二つの結晶相が確認された。CAp系試料の炭酸置換量はそれぞれ7.99, 6.84, 7.84及び6.9 wt%であった。 0.3SrHApの二次元1H→31P HETCOR-NMRスペクトルの解析により,1Hの投影スペクトルでは0.2 ppm付近にHAp格子中のOH基,6.1 ppm付近に試料表面の吸着水,9.8 ppm付近にP-OH基に由来するピークが観察された。31P断面スペクトルから,結晶構造中のオルトリン酸イオンに帰属される対称なピークが観測された。一方,試料表面のH2O近傍の31P周囲の局所構造と,P-OH基近傍の31P周囲の局所構造を反映する31P断面スペクトルの形状は互いに類似し,結晶構造中のオルトリン酸イオン由来のピークよりも幅広いことから,試料表面のH2O近傍にP-OHを持つプロトン化したリン酸イオン種であることがわかった。SrHApはSr(II)置換HApをコアとし,その周囲をP-OHを持つ化学種層が覆ったコア-シェル型構造であると考えられる。13C MAS-NMR分光法により,アパタイト結晶構造中のリン酸イオンサイトに炭酸イオンが置換したB-typeアパタイトであることがわかった。 In vitro溶解性試験の結果から,Sr及び炭酸含有量のいずれを調節しても溶解性が変化し,Sr含有量の増加よりも炭酸含有量の増加による溶解性の向上が顕著であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二次元固体NMR分光法による炭酸含有水酸アパタイトの炭酸基周囲の精密構造解析を除き,年度内計画は順調に進展している。骨欠損部位でSr(II)を徐放する生体吸収性骨充填材の設計指針を得ることを目的として,α-TCP(リン酸三カルシウム)あるいはSr含有α-TCPの加水分解反応を利用して,生理活性金属イオン種(Sr)と炭酸イオンをアパタイト結晶構造中に導入し,「非化学量論的組成」と「構造の乱れ」を誘発させ,作製したイオン置換型HApの化学組成,分子構造・局所構造の精密解析とin vitro溶解性試験を実施した。13C MAS-NMR分光法により,炭酸およびSr置換型HApはアパタイト結晶構造中のリン酸基に置換しているB-typeアパタイトであることがわかった。炭酸あるいはSr(II)の置換によりHApのin vitro溶解性が向上し,Sr及び炭酸含有量のいずれを調節しても溶解性を変化させることができ,Sr含有量の増加よりも炭酸含有量の増加による溶解性の向上が顕著であった。よって,Srおよび炭酸置換Ca欠損型HApは骨再生促進型の生体吸収性材料として有望であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度までに得られた知見に基づき,炭酸イオンをアパタイト結晶格子内に導入することにより「非化学量論的組成」と「構造の乱れ」を誘発させた階層構造制御型ロッド配列構造を創製し,さらに,ガラスあるいはガラスセラミックスを出発原料としたリン酸塩水溶液中での転換反応を利用した三次元骨格多孔体の作製を実施する。また,転換反応に利用する水溶液の種類を変化させることで,最表面と内部構造の異なる逐次積層(堆積)型のロッド配列構造の創製を試みる。「階層構造制御技術」,「生医機能;生命機能物質の吸着,生体吸収性の制御技術」を確立して,階層構造が制御されたセラミック基生医材料を創製する。得られた結果を取りまとめ学会発表を行う。
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Causes of Carryover |
本年度の研究計画で,炭酸イオンを導入した炭酸含有水酸アパタイトの結晶構造中の炭酸イオンの局所構造を明らかにするために,13C NMR分光法による構造解析を試みたところ,合成した炭酸含有水酸アパタイトの炭酸イオン含有量が低く,NMR信号の観測感度が不十分であったことから,13Cからなる炭酸ナトリウム(Na2CO3)安定同位体試薬を購入してNMRデータ収集をしていたが,実験に必要な安定同位体試薬が不足し,製造元での受注生産が年度内に間に合わなかったため,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
13C核の観測感度を向上するために13Cの安定同位体試薬Na2CO3水溶液を購入して,Sr(II)あるいは炭酸イオンを結晶構造内に導入した,「非化学量論組成」と「構造の乱れ」を誘発させたアパタイトについて1H-31P, 1H-13Cの異種核相関 (HETCOR) NMR分光法による精密構造解析を行う。
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Research Products
(9 results)