2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24360289
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
金武 直幸 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00115552)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久米 裕二 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30377890)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エコマテリアル / ポーラス金属 / 気孔構造 |
Research Abstract |
本研究では、発泡アルミニウムの緻密層や気孔率・気孔サイズの分布を適材適所に変化させた、傾斜気孔構造を形成する基礎技術の確立を目指している。そのために、緻密な表面硬質層と内部の気孔サイズが連続的に変化する傾斜気孔構造を形成する、あるいは竹の節構造のように部分的緻密構造を形成するための新規技術の開発と技術課題の解明を目的としている。この目的に対して、本年度は以下の研究計画を実施して成果を得た。 (1)発泡プリカーサの加熱温度勾配の制御による気孔構造変化の検討:プリカーサの加熱発泡時に、プリカーサ内部で温度勾配が生じるように加熱方法を制御して、内部の気孔構造を傾斜させる可能性を検討した。その結果、温度勾配に応じて、気孔率や気孔サイズを連続的に変化させることが可能であること、気孔の傾斜構造は合金組成によって変化する固液共存域の液相率に依存することなどを解明した。 (2)発泡プリカーサの冷却温度制御による気孔構造変化の検討:加熱発泡途中のアルミニウム合金を温度制御した金型内で冷却する方法によって、気孔率や気孔サイズの分布を制御する可能性を検討した。その結果、発泡途中のプリカーサを金型で冷却することで表面部分の発泡の進行を抑えて、内部に気孔の不均一分布を生じる可能性を確認できた。しかし、金型冷却法では、肉厚の小さい試料で十分な傾斜気孔構造が得られないなどの課題が見出された。 (3)発泡アルミニウムの部分加圧圧縮による気孔構造の変化と節構造の形成:表面緻密層を持つ積層ポーラス板を室温あるいは昇温下で部分的に加圧圧縮して、一部分を緻密化する方法によって節構造の形成とその付近の気孔構造の変化について検討した。その結果、室温加工でも積層ポーラス板は全体が変形することなく部分的な経常付与が可能であることを見出した。さらに、試料サイズによって変形挙動が異なることも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画で予定した3つの研究項目は、いずれも計画通り研究を実施することができた。その内、(1)発泡プリカーサの加熱温度勾配の制御による気孔構造変化の検討と、(3)発泡アルミニウムの部分加圧圧縮による気孔構造の変化と節構造の形成に関しては、いずれも計画通りに問題なく研究を推進することができ、予想以上の多岐にわたる成果をあげることができた。一方、研究項目(2)発泡プリカーサの冷却温度制御による気孔構造変化の検討については、当初計画した金型冷却方法では試料サイズが小さくて、十分な傾斜気孔構造を得られるようなプロセス条件を解明するには至らなかった。 以上のように、本研究課題では研究目的を達成するために3つの異なる研究項目を立案して2年間の研究を進めた結果、当初の計画通りには成果が得られそうに無い項目と、計画以上の成果が得られそうな項目とが明らかになって来た。その結果、研究項目(3)について、関係技術の確立と工業利用への発展の可能性を確認することができ、翌年度の研究計画に明確な道筋をつけることができた。最終年度には、この研究項目を重点的に研究推進して本研究課題の目的を達成していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
過去2年間に実施した研究項目は、発泡アルミニウムと緻密金属を複合した不均一構造部材に関する研究項目と気孔構造を連続的に変化させる傾斜構造部材に関する研究項目とに大別される。その中で、前者に関連して検討した発泡アルミニウムのサンドイッチ板を塑性加工してポーラス層と緻密層を制御して複雑形状を付与する技術については、今後の工業利用への発展が大きく期待される。そこで、最終年度はそれに関連した研究項目を中心に重点実施して、当初の研究目的を達成できるように推進する計画である。具体的には次のような研究を推進する。 (1)発泡アルミニウムの部分加圧圧縮による気孔構造の変化と節構造の形成: 積層ポーラス板を室温あるいは昇温下で部分的に加圧圧縮して節構造を形成する技術について、特に、加工温度や金型形状などの成形条件がポーラス板全体の変形挙動や気孔の変形挙動に及ぼす影響を解明する。さらには、様々な不均一気孔構造を有するサンドイッチ板の機械的特性についても検討して、部分緻密化加工したサンドイッチ部材の有用性について整理考察する。 (2)発泡アルミニウムサンドイッチ板の製造における気孔形成の制御: 発泡アルミニウムと緻密金属表層とのサンドイッチ板を製造する方法として、発泡プリカーサ(発泡前駆体)と金属板を予め圧延接合した後に加熱発泡する技術について、平成24年度に検討した。この結果、圧延加工を受けたプリカーサの発泡特性が未圧延の場合と異なる課題がある。そこで、発泡途中の内部微視組織変化や気孔の生成過程など、プリカーサの発泡特性に対する圧延加工の影響を系統的かつ詳細に検討して、圧延接合したプリカーサの発泡特性に関する基礎的データベースを構築する。その成果と前項目の成果を融合して、生体骨に倣う発泡アルミニウムの傾斜気孔構造の形成に関する新技術の確立を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、当初3つの研究項目の実施を計画した。その中で1項目については課題が多く今後のさらなる検討が必要となった一方、別の2項目は計画通り順調に研究が進行した。 そこで、順調に進んだ2項目の研究を優先して推進し、他の1項目に使用を予定した研究費を一時保留して、来年度も含めた今後の検討によって、研究費の使用項目を判断することとした。 次年度は、今年度の研究計画の中で順調に成果が得られた2項目の研究をさらに推進する予定である。したがって、これらの研究実施に必要な物品購入が増えるものと予想されるので、繰越金額をそれらの物品購入に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)