2013 Fiscal Year Annual Research Report
世界初の金属間化合物による溶解性インプラントの創成
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24360290
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
萩原 幸司 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10346182)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 金属間化合物 / 溶解性 / インプラント / 生体材料 / Mg合金 / Ca合金 / 生体親和性 / 力学特性 |
Research Abstract |
「金属間化合物基生体内溶解性構造材料」の開発について,本年度はさらにCa-Mg-Zn三元合金に検討を拡張し,三元状態図の確立,合金組成制御による溶解挙動制御について詳細な評価を進めた.XRD等による同定により各合金では若干の第二相を含有するものの,ほぼ配合組成を有する化合物が主構成相として存在することを確認した.浸漬試験において,すべての試料で試験開始直後に急激なpH値の変化を示したが,浸漬24時間以降はほぼ一定値を推移した.この安定時のpH値は溶液中での反応性の高さを示す指標となると考えられる.Mg2Ca, CaMgZnといった,Caを33.3at.%以上含む化合物は総じて反応性が非常に高く,試験開始後24時間以内に試験片がバルク形状から粉末形状に破砕することが確認された.一方でCa2Mg5Zn13,MgZn2,CaZn5といった化合物については,250時間浸漬後においてもほとんど質量変化がないことが確認され,Ca濃度33.3at.%未満の化合物では,その組成制御により溶解挙動が制御できる可能性が示唆された.この点についてさらに詳細に明らかにすべく,広い固溶域を有するIM1化合物に着目し,Ca3Mg12Zn3,Ca3Mg10Zn5,Ca3Mg9Zn6,Ca3Mg8Zn7,Ca3Mg7Zn8,Ca3Mg6Zn9,Ca3Mg4.6Zn10.4といった異なる組成を有する各合金を準備し,浸漬時の電気化学測定,水素捕集等を行うことにより,同一構造を有する化合物においても,溶解挙動がその組成に依存して劇的に変化する,すなわち合金組成制御による溶解挙動制御が実現できることを明らかにした.現在さらに基礎検討として,Mg,Zn単結晶を用いた溶解挙動の結晶方位異方性評価を行っており,方位に依存した比較的大きな溶解挙動変化を見出している.このように得られた知見を本年度総括することで,新規化合物インプラントの開発に向けた指針構築を実現するべく検討を進める.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Ca-Mg-Si,Ca-Mg-Zn両系について3元系中に存在する化合物の特性評価が概ねすべて終了し,開発に向け有望そうな幾つかの相を発見することができた.また金属間化合物の溶解挙動の支配因子に関し,下記に示す電気化学測定や,水素捕集実験により,期待以上の知見を得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
溶解試験に加え,昨年度提案したポテンショ・ガルバノスタットを用いた電気化学的測定により,期待通り化合物の溶解挙動と合金組成に関する系統的な知見を得ることができた.これら成果を基に最終年度は組織制御,結晶方位制御に着目することで,新規インプラント材料開発の指針を示すべく検討を進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画では,各種合金作製を研究室内で実施するための溶解炉(803万円)の購入を申請していたが,実際の交付予算ではこの購入が実現できなかったため,助成金の残余が生じた. 本助成金は,装置が購入できなかったため作製が困難となった高融点金属含有材料について外部に作製を委託するための費用,および当研究室における試料調整費用として使用する.
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Research Products
(6 results)