2013 Fiscal Year Annual Research Report
金属材料の極低ひずみ速度クリープ挙動とその微視的機構の解明
Project/Area Number |
24360292
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中島 英治 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (80180280)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
波多 聡 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (60264107)
池田 賢一 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (20335996)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | クリープ / 高温変形 / 電子顕微鏡 / 微細組織 / 耐熱構造材料 |
Research Abstract |
本研究は、構造用金属材料の実用環境を想定した『極低ひずみ速度域でのクリープ』を高精度に観測・解析する手法の確立、および極低ひずみ速度クリープにおける微視的な変形機構の解明を目的とする。そのために、コイルばねクリープ試験法の高精度化、極低ひずみ速度クリープに伴う微細組織変化のナノスケール観察および理論計算を融合し、耐熱金属材料を中心とした各種金属材料の極低ひずみ速度クリープ現象の本質的理解を目指している。 平成25年度は、フェライト系耐熱鋼に最大10000hの長時間時効を施した時効材の微細組織と極低ひずみ速度クリープ変形挙動の対応関係を定量的に評価した。その結果、本研究で用いたフェライト系耐熱鋼の主要な析出物であるM23C6炭化物の分散状態は未時効材で最も疎であり、700℃で1000hの時効によって最も密となり、その後、時効時間とともに疎になっていくことを明らかにした。さらに、時効に伴うM23C6炭化物の分散状態の変化と極低ひずみ速度域における各時効材のひずみ速度の大小関係に明瞭な相関があったことから、比較的高いひずみ速度域においてはマルテンサイトラス組織が転位運動の主要な障害になるのに対して、極低ひずみ速度域ではM23C6炭化物に主要な障害が変化していることを明らかにした。 また、実用域よりもさらに低ひずみ速度域のクリープ変形挙動に関する基礎的な知見を得ることを目的として、純Niを使用して結晶粒径が異なる試料を作製し、コイルばねクリープ試験を行った。その結果、500℃において、平均結晶粒径25μmの試料では20MPa、120μmの試料では10MPaにおいてクリープ変形挙動が変化することを確認し、クリープ変形挙動が変化する応力値に結晶粒径依存性があることを実験的に明らかにするとともに、これらの値を境界として高応力と低応力では転位運動の挙動が変化することを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フェライト系耐熱鋼に関しては、ひずみ速度域に応じたクリープ変形挙動の変化を明らかにするとともに高温時効組織とクリープ変形挙動の関係を見出し、論文執筆や学会発表を行うことができており、純Niの極低ひずみ速度クリープ変形挙動については、クリープ変形挙動が変化する応力値に結晶粒径依存性があることを実験的に明らかにし、学会発表を行うことができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
フェライト系耐熱鋼と純Niで得られた知見をもとに、次世代火力発電の高温部材への適用が検討されているNi基耐熱合金に関して、極低ひずみ速度域におけるクリープ変形挙動とそれに及ぼす結晶粒径や析出粒子の影響の解明を進める。また、クリープ変形や高温時効に伴う微細組織変化の理論計算に関しても海外研究連携者との共同研究を進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度後半からコイルばねクリープ試験を開始する予定のNi基耐熱合金Alloy617の入手が困難となり、試験片加工費として準備していた経費が残ることになったため。 次年度前半に素材を調達し、8月までには試験片加工を次年度使用額を用いて業者へ依頼する予定である。
|