2013 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ材料試験による複相金属材料の微視的変形・破壊機構の解明
Project/Area Number |
24360293
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
高島 和希 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (60163193)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 光弘 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (80332865)
峯 洋二 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (90372755)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 構造・機能材料 / 機械的性質 / 材料組織 / 材料試験 / 破壊 |
Research Abstract |
複相金属材料において、マルチスケール的な考えに基づいて強靭化設計を行うためには、降伏から破壊に至る変形過程において、各構成相及びその界面での微視的な変形挙動の観察及びメカニズムの解明が必要とされる。しかしながら、複相金属材料の階層的な微視組織レベルにおける変形メカニズムの研究は十分には行われていない。この原因は、組織構成要素レベルでの局所的な強度、変形挙動を直接計測する手法がないためである。本研究では、申請者らが世界に先駆けて開発したナノメータレベルで試験片の表面変位及び局所的な歪計測が可能なマイクロ材料試験機を用いて、複相組織金属材料における降伏から破壊までの変形挙動の動的観察を行い、その変形機構の解明を行うことを目的とする。 この目的を達成するために、平成24年度においては、対象とする微視組織の変形挙動をその場で観察できる装置の開発及び微視組織レベルでの歪計測法の開発を行い、金テープから切り出したマイクロ試験片に対して引張試験を行うことで、本計測法の妥当性について検証した。そこで平成25年度では、組織形態の異なる複相金属材料の微視組織から切り出した微小引張試験片に対して、変形挙動の計測・観察を行うことで、本計測手法の確立を目指した。 試料には、組織形態の異なる代表的な二相金属材料として、マルテンサイト/フェライトDP鋼、LPSO相で強化したMg合金を用いた。各試料よりFIBを用いて、マイクロサイズの試験片を切り出し、微小引張試験を行うことで、組織と関連した局所的な変形挙動、ひずみ分布の計測を行った。その結果、硬質相(マルテンサイトやLPSO相)近傍において、応力集中によるすべり線の集中的な発達を観測することができ、それに関連したひずみ分布の計測を行うことができた。このことは、本計測法により、組織に対応した局所領域における変形挙動の動的観察が行えることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果の概要に示したように、平成24年度に研究代表者が開発したマイクロ材料評価技術を用いて、二相金属材料における強化相近傍の局所的な変形挙動及び歪分布を世界で初めて明らかにすることができた。以上のように、当初の計画通りの成果が得られていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成25年度までに確立させた試験法を用いて、析出相の異なる各種二相金属材料の変形挙動を、降伏段階、加工硬化段階、最終破壊段階に分けて検討を行う。これにより、降伏から破壊に至るまでの各構成組織の変形メカニズム(ボイドの形成、成長、連結を含む)を明らかにすることができる。 さらに、階層的な構成組織の変形メカニズムに基づくマルチスケール的な強化設計の可能性について検討するとともに、その指針を示すことにより、材料強化設計へ向けた基盤構築を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度においては、微小試験片の作製数が当初計画より少なく実施でき、しかも試験機の改良も当初の予想より容易に完了することができたため、基金分の直接経費を次年度へ繰り越して使用することにした。 平成26年度では、微小試験片に対して、降伏、加工硬化、破壊の各過程における計測を行うため、試験片の作製本数がさらに増えるとともに、解析用の白色干渉データも大幅に増加するため、繰り越し分と合算して使用する。これにより、効率的な研究を行うことが可能となる。
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