Research Abstract |
本年は,ワンステップ物理成膜法による量子ドット増感型次世代太陽電池用材料の探索的研究を行ったこの際,物理成膜法として,RFスパッタリング法およびホットウォールデポジション(HWD)法を用い,それぞれ生成熱離散型および非固溶型の材料設計に基づき薄膜合成を行った.RFスパッタリング法では,InSb添加TiO2薄膜の作製を行った.その結果,熱処理を通じてInSb相の一部が乖離し,In203または金属Sbを形成する,当該用途に比較的好適なIn203は,比較的高InSb濃度の組成範囲においてのみ出現し,TiO2との酸化物混合相を形成する,また,InSb濃度の増加と共に光吸収端は長波長側にシフトする傾向を示す高分解能透過型電子顕微鏡観察において,薄膜中に約15nmサイズのInSbナノ粒子が孤立分散することを確認した.したがって,組成最適化された薄膜は,InSbナノ粒子がTiO2とIn203の混合相マトリクス中に孤立分散したナノ複相構造を形成することを明らかにした.したがって,光吸収端の長波長側へのシフトは,InSbナノ粒子の量子サイズ効果による.他方,HWD法では,PbSeナノ粒子とZnSeマトリクスから構成されるナノ複相構造薄膜の作製を行い,その光電特性の研究を行った.その結果,薄膜中のPbSeナノ粒子サイズおよび密度は,HWD装置の基板温度およびPbSe固体蒸発源の昇華温度により,独立制御可能であることを明らかにした.また,p型Si基板上に作製したナノ複相構造薄膜の光電流スペクトルにおいて,基板温度の低下とともに可視光感度は向上する.これは,PbSeナノ粒子サイズの微小化に伴い光学ギャップが増加したことに起因すると考えられる.さらに,電極材料として,可視光領域に光吸収端を有するヘマタイト(α-Fe203)などの鉄酸化物薄膜の相安定化に関する検討を行った.
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