2012 Fiscal Year Annual Research Report
HPT加工で組織制御することによるオーステナイト系ステンレス鋼の高強度-高延性化
Project/Area Number |
24360306
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
梅本 実 豊橋技術科学大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90111921)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸高 義一 豊橋技術科学大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (50345956)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 金属 / 巨大ひずみ / 強度 / 延性 / 歪勾配 |
Research Abstract |
本研究ではオーステナイト系ステンレス鋼SUS304を高圧下のねじり試験器で強加工し、100%加工誘起マルテンサイト相とした試料を得た。この試料は強加工によって相変態しているだけで無く、ナノ結晶化が起こっており、引張強度が元の材料の400MPaと比べて2000MPa以上と極めて高強度になっていた。この試料を200-600℃で1時間焼鈍すると、硬さ、電気抵抗、飽和磁化のピークが400℃であった。そこで400℃焼鈍に伴う組織と力学特性の変化を500時間まで研究した。その結果、観察された特性の変化は溶質原子の粒界偏析、歪みの回復、G相の析出が原因であることが判明した。特にSi基の金属間化合物であるG相はこれまで析出強化型ステンレス鋼のマルテンサイト相か2相ステンレス鋼のフェライト相のみで見出されていた。これらではG相の析出前にマトリックスの化学組成がスピノーダル分解や、フェライトとオーステナイト相への元素分配により変化していたため、析出直前のマトリックスの組成が不明であった。本研究ではloo%bcc相で高Niの材料を選び、G相の析出前にスピノーダル分解や溶質元素の分配の無い状態でのG相の析出現象を調べることに成功した。400℃で500時間の焼鈍によって100%マルテンサイト基地の中にG相がスピノーダル分解を伴わずに析出するのが観察された。高分解能電顕とエネルギー分散EDS測定によりG相はMn-Ni-Siの濃い、fcc相で格子定数は1.16nmであることが分かった。この格子定数の値は以前の報告と一致していた。APTによる化学分析ではG相の組成はMn21Ni50Si24Fe4Crであった。引張試験からG相は脆性をもたらすことが分かった。Bcc単相からのスピノーダル分解を伴わない析出や脆性がG相のみの原因で起こることを報告したのはこれが初めてである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的1)微細化法の解明と目的2)の引張強度に関しては予備実験が終了した。また、目的の3)時効硬化の原因解明に関してDSC測定等を実施し、大きな成果が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
結晶粒径と歪量の関係をSUS316とSUS304で実施する。特にSUS304では残留γによる歪誘起塑性現象を研究する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度購入済みの微小衝撃破断試験機用温度試験ユニットを活用するため、HTP冶具の作成、試験片の加工等に使用予定である。
|
Research Products
(7 results)