2013 Fiscal Year Annual Research Report
超臨界モノマーを含むポリマー溶液の液液平衡の測定と推算
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24360321
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
滝嶌 繁樹 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10188120)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木原 伸一 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30284524)
春木 将司 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90432682)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ポリマー溶液 / 液液平衡 / 分子量分布 / ポリエチレン / 状態方程式 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、多分散ポリエチレンとヘキサンからなる2成分系ポリマー溶液の相平衡測定を行った。使用したポリエチレンは重量平均分子量3万、多分散度4.24のものであり、仕込みポリマー質量分率0.075, 0.10, 0.15, 0.20、温度200℃、圧力2.5, 3.0, 3.5 MPaの条件で液液平衡状態における両相の組成とポリマーの分子量分布を測定した。このような高温高圧下におけるポリマー溶液系の相平衡データは世界初のものであり、測定結果より次のことが明らかになった。 1.仕込みポリマー組成の上昇に伴い、溶媒リッチ相の組成は高ポリマー組成側にシフトし、ポリマーリッチ相の組成は逆に低ポリマー組成側にシフトする。したがって両相の組成差が小さくなる。 2.圧力の低下に伴い両相の組成差は大きくなる。 3.溶媒リッチ相にはポリマーの低分子量成分が多く含まれ、ポリマーリッチ相には逆にポリマーの高分子量成分が多く含まれる。したがって相分離によりポリマーの濃縮・溶媒の回収だけでなく、ポリマーの分画が可能である。 4.溶媒リッチ相のポリマーの平均分子量と多分散度は仕込みポリマー組成や圧力にあまり依存しないが、ポリマーリッチ相のポリマーの平均分子量と多分散度は仕込みポリマー組成の低下により上昇し、圧力の影響は仕込みポリマー組成が臨界組成よりも大きいか小さいかによって異なる。 5.Sanchez-Lacombe状態式によって液液相分離境界の実験値を正確に表現することにより、相平衡組成やポリマー分子量分布の実験値を精度よく予測することが可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基礎的な項目である溶媒+多分散ポリマー溶液系の液液平衡組成と両相のポリマー分子量分布の測定を行い、世界初となる貴重な知見を得た。また、Sanchez-Lacombe状態式によって液液相分離境界の実験値を正確に表現することにより、相平衡組成やポリマー分子量分布の実験値を精度よく予測することが可能であることが明らかになった。本研究の最終目標はエチレンを加えた3成分系について同様な検討を行うことであり、この点については多少の遅れがあるものの、相平衡組成の分析手法をほぼ確立できたので最終年度に測定値を蓄積すると共に、状態式による予測に関する検討を行う準備は整った。
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Strategy for Future Research Activity |
分子量分布の異なる種々の多分散ポリエチレンを用いて、溶媒との2成分系、および超臨界エチレンを加えた3成分系に対して相境界と液液平衡組成、さらに各相のポリマー分子量分布の測定を行う。多分散ポリエチレンは、市販のものを単に用いるだけでなく、複数の多分散試料および単分散試料を混合することで多分散性や平均分子量を種々に変化させて、これらの影響を調べる。特に、複数の単分散ポリエチレンの混合試料は、相境界および平衡組成に対する分子量分布の影響や、両液相への各分子量成分の分配関係を単純化して理解・検討するために有用であり、状態方程式や混合則の改良にも大いに役立つと考えられる。 また、ポリマーの分子量分布を考慮した相境界および相平衡の推算を行う。従来の状態方程式ではそのモデルの構築においてポリマーのセグメントを分割し、低分子とポリマーセグメントがランダムに配置されているとして系の分子間相互作用エネルギーが見積もられている。このような考え方がポリマー溶液系の相平衡計算における状態方程式の推算性の低さの原因であると考えられるため、ポリマーセグメントの連結性を維持し、高分子の近傍と遠方では低分子の周りの局所組成が大きく異なる(すなわち、低分子の周りの局所組成には大きな分布がある)ことを考慮に入れて分子間相互作用の総和を見積もる。 これらの検討は世界で初の試みであり、本研究で使用する成分は典型的なモノマー、溶媒、ポリマーの組み合わせであるため、このような混合物の液液平衡の標準データとなるのは確実であり、超臨界流体系およびポリマー溶液系の物性研究に大いに貢献すると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品の購入において計画時の単価と実際の単価にわずかな差が生じたため。 金額がわずか(2,035円)であるため、消耗品の購入で調整する。
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