2013 Fiscal Year Annual Research Report
抗体医薬をめざした最先端ハイブリドーマテクノロジーの開発と応用
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24360339
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
冨田 昌弘 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20183494)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水谷 文雄 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 教授 (80118603)
安川 智之 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 准教授 (40361167)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | B細胞 / 抗原発現細胞 / ハイブリドーマ / 立体構造特異的抗体 / 誘電泳動 / 細胞配列 / 免疫捕捉 / 細胞分離 |
Research Abstract |
10,000個のマイクロウェルアレイ電極を作製し,誘電泳動による異種細胞ペアリングを行った.正の誘電泳動を用いるとミエローマ細胞を1秒でウェル内に誘導できた.初期細胞濃度,印加電圧強度,周波数の最適化を行い,60-70%のウェル内に単一ミエローマ細胞が捕捉された細胞アレイを得ることができた.この後,B細胞懸濁液をインジェクションしても,ウェルに捕捉されたほとんどの細胞が捕捉されてウェル内に残った.さらに,導入したB細胞を正の誘電泳動によりウェル内に誘導し捕捉することができた.B細胞のサイズ(直径6μm)は,ミエローマ細胞(直径12μm)と比較して小さいため,完全な1対1のペアリングは達成できていない.しかし,同程度のサイズの2つの異種細胞をウェルアレイ内に捕捉し,垂直方向にペアリングできた.この手法を用いると,誘電泳動によるウェル内への誘導操作(10秒)を2回,余分な細胞の洗い流し操作(20秒)を2回の合計1分で,5,000以上の異種細胞ペアの作製を可能にした.ペアリング率は現在のところ最大で53%である.さらに,電気パルス法を用いて,細胞ペアの融合を行った.片方の細胞を蛍光染色した細胞ペアアレイをウェルアレイ内に作製し,誘電泳動用に使用した電極に電気パルスを印加して共焦点蛍光顕微鏡で観察した.数分後には蛍光染色していない細胞から蛍光が観測されたため,細胞を融合させることができた.さらに,誘電泳動デバイスのスケールアップを行い,500 x 500ホールアレイ(25万アレイ)へと拡張した.これにより,10万個以上の細胞ペアをわずか1分で作製することが可能となるため,希少な高性能抗体産生細胞の探索ツールとして実現させる準備が整った.さらに,遺伝子組換え抗原発現ミエローマ細胞による目的の感作B細胞の選択を、免疫蛍光抗体法に基づき明らかにすることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に予定していた細胞ペアリングを予定以上の迅速性と高効率性で達成することができた.10,000個のマイクロウェルアレイ電極を用い誘電泳動による細胞操作を行うと,ランダムに分散していたミエローマ細胞を1秒でマイクロウェル内に導入でき,その捕捉効率は87%であった.さらに,誘電泳動を用いてミエローマ細胞の捕捉されたマイクロウェルアレイにK562細胞を誘導すると,誘導時間1秒および捕捉効率87%でウェルアレイ内に捕捉できた.シングルウェル内にシングル細胞ペアを64%で形成できた.誘電泳動デバイス内への細胞インジェクション,不要細胞の除去作業等を含めたトータルの細胞ペアリングに必要とする時間は,わずか1分であった.これらの内容は,当初の実験計画通りであるが,その迅速性,捕捉率およびペアリング率は,当初の達成予想を大幅に上回っている.さらには,最終年度に予定していたマイクロウェルアレイ内に作製した細胞ペアの電気パルス細胞融合に着手した.誘電泳動による細胞ペア形成に使用したマイクロウェルアレイ電極を電気パルス印加にも使用できることを示した.一方の細胞を蛍光染色した細胞ペアに電気パルスを印加すると数分後にペアを形成した両細胞から蛍光シグナルが観測され細胞を融合できた.抗原感作マウスから摘出した脾臓に含まれるB細胞の配列化も行い,B細胞-ミエローマ細胞の複合体を形成し,その可視化解析を行った.さらに,免疫蛍光抗体法に基づき抗原発現ミエローマ細胞による感作B細胞選択を実証することができた.このことは,DNA免疫後の感作B細胞中に抗原の立体構造を認識するB細胞が存在することを強く示唆するものである.以上より,当初計画にある項目をほぼすべて遂行し,最終年度に予定した計画の一部も遂行できていることから,当初の計画以上に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
DNA免疫法によるマウスの免疫化によって作製した抗体産生B細胞の遺伝子組換え抗原発現ミエローマ細胞による選択法と誘電泳動による細胞操作法を組み合わせ,アレイ電極内での迅速な複合体形成,抗体産生細胞の選択,細胞融合の一連をデバイス内で行い,迅速に有用な抗体を産生するハイブリドーマを作製する技術を完成させる.前年度までに得られた知見を基に、ミエローマ細胞をマイクロウェルアレイに誘導し、ミエローマ細胞アレイを得る。さらにマウス脾臓から摘出したB細胞をミエローマ細胞アレイの上に誘導し、ミエローマ細胞-B細胞の細胞ペアを形成させる。さらに、電気パルスを印加してハイブリドーマを得る。マイクロウェルアレイ内で形成させたハイブリドーマを負の誘電泳動によりメインチャンネルへと誘導し、培地を送液してデバイス外に回収する。HAT選択培地を用いて回収した細胞から有用な抗体を産生するハイブリドーマを選択する。この手法を確立するために以下の項目を検討する。サイズの大きく異なるミエローマ細胞とB細胞をマイクロウェルアレイ内で縦方向に配列させるために、ウェルのサイズおよび形状の最適化を行う。また、電気パルス融合における電圧、パルス幅、パルスインターバルの最適化を行い、融合効率を向上させる。融合した細胞の回収における負の誘電泳動の条件も最適化する。これらの項目の最適化条件をそれぞれの項目にフィードバックし、ハイブリドーマ形成システムとしての最適化を図る。さらに、効率とスループットの向上を目的に、抗原-抗体反応を利用した脾臓細胞からのB細胞の分離を行う。これと並行して,DNA免疫によって感作された目的のB細胞を抗原発現ミエローマ細胞によって一括選択し,両細胞に直流矩形波の電気パルスを負荷して選択融合し,立体構造特異的モノクローナル抗体の高効率作製を実現する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度における予算の軽減による研究の遅滞を防ぐために当該使用額が生じた。 当初の計画通り,DNA免疫法によるマウスの免疫化によって作製した抗体産生B細胞の遺伝子組換え抗原発現ミエローマ細胞による選択法と誘電泳動による細胞操作法を組み合わせ,アレイ電極内での迅速な複合体形成,抗体産生細胞の選択,細胞融合の一連をデバイス内で行い,迅速に有用な抗体を産生するハイブリドーマを作製する技術を完成させる.これと並行して,DNA免疫によって感作された目的のB細胞を抗原発現ミエローマ細胞によって一括選択し,両細胞に直流矩形波の電気パルスを負荷して選択融合し,立体構造特異的モノクローナル抗体の高効率作製を実現する.
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Research Products
(62 results)